インターネット上の誹謗中傷問題の影響で、侮辱罪が厳罰化される見通し!?
1 現状の侮辱罪とは?
近年、インターネット上の誹謗中傷が大きな社会問題になっております。
インターネット上の誹謗中傷により成立する犯罪は、主に「侮辱罪」になります。
ところがこの侮辱罪、刑法上最も軽い法定刑である「拘留または科料」しか規定されていません(なお侮辱罪よりも重い罪である名誉棄損罪の法定刑は、3年以下の懲役・禁錮又は50万円以下の罰金であり、大きく違います)。
そこで現在、法制審議会(法改正を検討する機関)にて、侮辱罪の厳罰化が検討されているようです。
内容としては、「拘留または科料」に、「1年以下の懲役・禁錮、または30万円以下の罰金」が加えられる方向で審議がされているようです。
2 どれくらいの厳罰化なのか?
拘留や科料という刑罰は、懲役や罰金よりも聞きなれない言葉ですよね。
拘留とは1日~29日間刑事施設で身柄を拘束される刑罰です。
科料は、1000円~9999円の金銭を納付しなければならない刑罰です。
その一方で懲役(及び禁錮)の期間は30日~20年間で、罰金は1万円以上です。
ですので、シンプルに考えると「拘留は懲役より軽い刑罰」「科料は罰金より軽い刑罰」ということになります。
これを今回の侮辱罪の厳罰化で考えてみると、
・現在…1日~29日間の身柄拘束または1000円~9999円の金銭納付
・今後…1日~1年間の身柄拘束または1000円~30万円の金銭納付
となるわけですね。
3 時効が変わる?
実は、上記2のような単なる厳罰化に加え、「時効期間が延びる」という大きな効果が期待されています(時効期間は、法定刑の重さに連動する仕組みになっています)。
今の刑法だと、侮辱罪の時効は1年です。
それが、改正により3年となる見通しです。
インターネット上の誹謗中傷は、まずそれを行った本人を特定する作業に時間がかかります。
いくら国の捜査機関といえど万能ではないですので、事件が発覚してから数か月で捜査を完了し公訴の提起まで行うというのは、あまりにハードルが高いと判断されたのでしょう。
4 今後の変化
これまでは、インターネット上の誹謗中傷に対して「捜査が時効完成前に間に合わない、間に合ったとしても数千円の科料にしかならない」という事態が多発していました。
今回の法改正が成立すれば、このような事態が少なくなると共に、インターネット上の誹謗中傷を抑止する効果も生まれるでしょう。
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