捜査先から現金約3,000万円を窃盗──東京地裁が執行猶予付き判決 ~高額窃盗に執行猶予がついた異例の背景とは~

1.事件の概要

報道によると、警視庁の元巡査部長であった男性(当時45歳)が、捜査で訪れたアパートに侵入し、現金約3,000万円を盗んだとして、窃盗と建造物侵入の罪で起訴されていた事件について、令和7年6月、東京地方裁判所は懲役2年6月・執行猶予3年の判決を言い渡しました。

被告人は、職務中に「捜査」と称して対象先に赴き、職務権限を悪用して室内に侵入。現金を盗み出したとされています。本人は起訴内容を認め、「将来の金銭的不安や仕事のストレスがあった」と述べており、盗んだ金はすでに全額返金されているとのことです。

検察側は「住宅ローン返済を楽にしたいとの動機で、警察官としての地位を利用した極めて悪質な犯行」として実刑を求めていました。

 

2.本件で成立する犯罪について

● 窃盗罪(刑法235条)
他人の財物を窃取した場合に成立します。法定刑は「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」で、財産犯の中でも重い類型です。
● 建造物侵入罪(刑法130条)
正当な理由なく建物に立ち入った場合に成立します。たとえ「捜査」を名目としていても、真の目的が窃盗であれば正当とは認められず、違法な侵入行為と評価されます。

今回のように、職務上の立場を悪用した犯行は、社会的信頼の侵害という点でも特に重く見られる傾向があります。

 

3.判決と量刑判断(3,000万円の窃盗でも執行猶予となった理由)

窃盗の被害額が約3,000万円に及ぶ場合、通常であれば実刑判決が相当と判断されるケースがほとんどです。

実際、一般的な事例では、被害額が1,000万円を超えた段階で執行猶予が難しくなる傾向があります。

しかし本件では、次のような点が執行猶予の判断に影響したと考えられます。
・全額を返金済みで、被害回復が完了している
・起訴内容を全面的に認め、反省の態度が明確である
・既に懲戒免職処分を受け、社会的信用を喪失している
・今後の監督体制(家族など)や再犯可能性の低さが評価された

以上から、刑務所での矯正処遇を経るよりも、社会内での更生に期待をかける方が合理的と判断されたと推察されます。

とはいえ、公務員が職権を用いて犯行に及ぶという行為の悪質性は否定できず、今後の裁判実務においても同様の事案で執行猶予が付くとは限りません。

 

4.当事務所の弁護方針(公務員・会社員など信用を重視される方へ)

本件のように、職務上の立場を利用した刑事事件は、刑事責任とともに社会的・職業的制裁が不可避となります。
また、報道やネット記事の拡散などにより、刑事処分以上に長期的な不利益を受けるリスクもあります。

当事務所では、以下の点を重視し、迅速に対応しています。
・逮捕前・後の早期対応と釈放交渉
・自首・被害回復(返金、謝罪)のアドバイス
・公務員・会社員の身分維持や職場への説明サポート
・実名報道や社会的信用毀損への備え
・執行猶予獲得を視野に入れた方針設計

 

5.まとめ(早期対応が将来を分けます)

3,000万円という金額でも、返金・反省・社会的制裁などが揃えば、執行猶予が付く可能性はゼロではありません。しかし、そのためには早期の対応と正確な戦略が欠かせません。

もしご自身やご家族が窃盗や横領などで捜査対象となった場合は、ためらわずにご相談ください。

時間が経つほど選択肢は狭まり、最善の結果を逃すリスクが高まります。

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