刑法177条3項の不同意性交等罪の故意 ~相手が16歳以上と勘違いしていた場合でも不同意性交等罪は成立するのか~
刑法177条3項では、「十六歳未満の者に対し、性交等をした者(当該十六歳未満の者が十三歳以上である場合については、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第一項と同様とする。」と規定されています。
そのため、13歳未満の者に対する性的行為ならびに13歳以上16歳未満の者に対する5年以上前に生まれた者による性的行為は、手段・状況・同意の有無に関わらず不同意性交等罪として処罰されます。
これは、立法者によれば、13歳未満の者や13歳以上16歳未満の者は、行為の性的な意味を理解する能力(意味認識能力)や行為が自己に及ぼす影響を自律的に理解する能力(影響理解能力)等が不十分であることから、対等な関係がおよそありえない年齢差(5歳差以上)がある場合に、一律に有効な同意がなかったとされるためです。
15歳と20歳の者との間におよそ誠実な恋愛が成立しえないかは議論があるところですが、今回は故意に着目します。
177条3項の不同意性交等罪は行為の同意・不同意は関係ないものの、相手が性交同意年齢(刑法上16歳以上)にあるかどうか・5歳差以上の年齢差があるかは構成要件要素であるため、故意の対象となります。
そのため、15歳の者を16歳と誤信して性交した者や、13歳の者を15歳と誤信して性交した19歳の者には故意がないため177条3項の不同意性交等罪は成立しません。
しかし、現実問題として、177条3項の不同意性交等罪で捜査を受けている時に、ただ単に相手の年齢や年齢差を誤信していたと警察に供述するだけでは警察・検察は捜査をやめることはないでしょう。
警察・検察は客観的状況・証拠などから被疑者が事件当時、相手が16歳未満の者であること、年齢差が5歳歳以上あることを認識していたことを立証しようとしてきます。
本来、刑事事件の立証責任は警察・検察にありますが、実際に177条3項の不同意性交等罪で故意がなかったと主張するためには、相手が虚偽の年齢を言ってきた、年齢を勘違いするのもやむを得ない状況であったことなどを示す客観的証拠が必要になってくると考えられます。


