オンラインカジノを利用したとして、賭博容疑で書類送検されていた男性が略式起訴されたとの報道!?
1.報道の概要
海外のオンラインカジノを利用したとして、賭博の容疑で書類送検されていた卓球の元日本代表・丹羽孝希選手(30)が、単純賭博罪で千葉地検によって略式起訴された。千葉簡裁は同日、罰金10万円の略式命令を出し、即日納付されています。
起訴内容によると、2023年6月11日、携帯電話で海外のオンラインカジノサイト「ステーク」に接続し、「テニス賭博」と呼ばれる賭けをしたとされます。
2.オンラインカジノの違法性
報道にあるとおり、本件は日本国内から海外のオンラインカジノを利用したとして、単純賭博罪で起訴され有罪となっています。
「海外で適法に運営されているオンラインカジノを利用しても違法にはならない」と考えている方もいるかもしれないが、これは誤りです。海外で適法に運営されているオンラインカジノであっても、日本国内からアクセスして利用すれば、賭博罪は成立します。
これは、日本の刑法が「日本国内にて行われた犯罪」を対象にしており、犯罪事実の一部でも日本国内で行われていれば「日本国内にて行われた犯罪」と見做されるからです。
つまり、どの国のどのようなシステムを利用したとしても、日本国内において賭け事を行えば、賭博罪が成立し得ます。
3.成立する罪
オンラインカジノを利用して賭け事を行った場合、基本的には単純賭博罪(刑法185条)か常習賭博罪(186条)が成立する。法定刑は、単純賭博罪で「五十万円以下の罰金又は科料」、常習賭博罪で「三年以下の懲役」となっています。
なお、常習性については、実際に反復継続して行っていたかに加え、行った賭け事の種類、内容、金額等を考慮の上で判断されます。
4.取締りの傾向
本件のほかにも、著名人がオンラインカジノを利用したとして検挙されたという報道が散見されます。著名人を対象とした検挙は、オンラインカジノ利用の違法性を啓蒙する趣旨、すなわち見せしめとしての意図があるとも考えられます。
しかし、だからといって一般人が取締りの対象とならないわけではないです。事実、警察庁の発表によれば、令和5年だけでも100人以上がオンラインカジノの利用を理由に賭博事犯として検挙されています。
今後は取締りが強化され、さらに検挙数が増えることも考えられます。
5.考えられる処分と弁護活動
本件のように、初犯の単純賭博罪であれば、起訴され有罪となっても罰金10万円程度となると考えられます。
一方で常習賭博罪の場合、法定刑には懲役刑しか定められていないため、起訴される場合は必ず正式裁判となり、有罪ならば当然ながら懲役刑となります。そのため、まずは常習性が認定されるおそれがないかを確認し、必要に応じてこの点を手当していくべきです。
その上で、単純賭博罪が成立するとしても、不起訴処分や科料(1万円未満を支払う罰)となるよう、情状弁護を展開していくことになります。
不起訴はもちろん、科料であっても罰金刑との違いは大きいです。国家資格の欠格事由や、会社の懲戒処分対象として「罰金以上の刑罰に処せられたこと」が定められていることが多いが、科料であればこれには該当しないからです。
そのためには、検挙される前に自首するということも有力な選択肢となります。
賭博罪は被害者のいない犯罪であり、示談などはできないのです。そのため、自首をして反省の姿勢を示すことが、捜査機関が処分を検討するに際しての考慮要素となることが考えられるからです。事実、賭博罪よりも重い法定刑が定められている罪であっても、自首したことが評価されて不起訴処分となった事例も多くあります。
過去にオンラインカジノなどの賭け事を行ってしまったことがある人は、速やかに専門家に相談して対応を検討するべきです。