刑法182条の新設について
16歳未満の者に対する不適切な接触要求に刑事罰
令和5年7月、刑法が大幅に改正され、性犯罪に関する新たな規定が多数盛り込まれました。
その中でも注目されるのが、新設された刑法第182条「16歳未満の者に対する面会等の要求に関する罪」です。
この条文では、16歳未満の児童に対して、性的な目的で会うように求める行為等が新たに処罰対象となりました。対象となる行為は、以下のような内容です。
• 16歳未満の者に対して、性的な意図をもって面会を求めること
• 上記要求により、実際に面会したこと
• 性交等をする姿態、性的な部位を露出した姿態などをとってその映像を送信することを要求すること
これまでは、実際に児童と会って行為に及んだ場合には児童福祉法違反や児童買春罪などで処罰される可能性がありましたが、「会う約束をするだけ」「誘うだけ」といった準備的段階の行為については、明確に処罰できないケースも多く、法の未整備が問題視されていました。
刑法182条の新設により、いわゆる「児童への面会要求型の性加害」や「グルーミング行為」が、たとえ実際に会っていなかったとしても、一定の条件のもとで処罰されることになりました。
この罪の構成要件は比較的厳格に設計されており、単なるやり取りや好意の表現がすぐに処罰されるわけではありません。処罰の前提としては、「性的な意図(性交等の目的)をもって」「16歳未満の者に対し」「面会等を要求した」ことが必要です。また、当該16歳未満の被害者が13歳以上である場合は、加害者が5歳以上年上であることも要件となっています。
この改正は、SNS等を通じた児童への接触や性被害が深刻化するなか、実効的な未然防止策として位置づけられています。
SNS上での軽率なやり取りが重大な結果につながることも増えています。「たった数通のメッセージ」でも、刑事事件化する可能性は十分にあります。
万一、捜査対象となった場合には、決して自己判断で対応せず、早い段階で専門の弁護士に相談することが極めて重要です。