児童ポルノ所持罪の成否と「過去のダウンロード行為」
~今は保存されていないファイルも「所持」に該当するのか?~
児童ポルノ禁止法7条1項では「自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者(自己の意思に基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)は、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。自己の性的好奇心を満たす目的で、第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録を保管した者(自己の意思に基づいて保管するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)も、同様とする。」と規定されています。
そのため、児童ポルノの所持そのものも処罰の対象となります。これにより、「誰かに見せる目的がなく、個人で保管しているだけ」というケースでも、所持自体が違法となっています。
では、過去に児童ポルノ動画をインターネットからダウンロードしたものの、その後削除した、あるいは保存していたかも記憶が曖昧——といった状況でも、「所持罪」に問われる可能性があるのでしょうか?
児童ポルノ所持罪の構成要件は以下のとおりです。
・児童ポルノを所持し、または記録媒体に記録して保持したこと
・自己の性的好奇心を満たす目的で行ったこと
重要なのは、「所持」の時点で成立する点です。
仮にファイルが現存していないとしても、「かつてダウンロードして保存していた」ことを裏付ける証拠(閲覧履歴、キャッシュファイル、クラウド上の残存データなど)があれば、所持罪として立件される可能性があります。
一方、以下のような事情がある場合には、立件が見送られる、または無罪と判断される余地もあります。
・自動的に一時保存されただけで、利用者が認識・管理していなかった
・保存していたのが一時的で、性的目的での保持とはいえない
・児童ポルノに該当するか否かが微妙な画像・動画であった
こうした判断は事案ごとに異なり、実務上も評価が分かれることがあります。捜査段階で「過去に見たことがある」といった曖昧な供述を不用意に行うと、不利な証拠とされる場合もあるため注意が必要です。
特に、近年はパソコンやスマートフォンの解析技術が発達しており、すでに削除されたファイルでも痕跡が残っていれば検出され、証拠として用いられるケースが増えています。
もしも過去にダウンロードや閲覧をした可能性がある、あるいは身に覚えのないデータについて捜査を受けているという場合は、決して一人で判断せず、早急に刑事事件に詳しい弁護士に相談することが重要です。


