メンズエステで生じたトラブルが刑事事件に!?~刑事弁護に経験のある弁護士が解説~
1.メンズエステで生じたトラブル
Aさんが、弊所にこんな相談をしてきました。
「私は、メンズエステに行き、キャストからオイルマッサージを受けていました。キャストの女性が露出度の高い衣装を着ており、誘惑してきているように見えたため、胸を触ってしまいました。」
すると、マッサージが終わった後、奥から店の人が出てきて、こんなことを言ったそうです。「メンズエステではキャストの身体に触ることが禁止されており、刑事事件になる。違約金として100万円という規則があるので、払ってもらえれば、示談ということで警察には届けない。」
Aさんは、とりあえず有り金と連絡先を渡して、家まで帰ってきたそうです。
以上の相談は、実際あった複数の相談内容を参考にして想定してみた仮想事例です。
しかし、最近、このようなケースで相談を受けることが多くなったように思います。
今回は、仮想事例をもとに、実際に刑事事件になる見通しや、取りうる弁護活動などを、刑事弁護人の知見から解説します。
2.メンズエステでのキスや接触行為には犯罪が成立する可能性は高い
そもそも、メンズエステの一般的な定義は、男性が、女性から、オイルマッサージなどの施術をうけ、リラクゼーションのサービスを受ける店だと言われています。また、そもそも、性的なサービスを受ける施設では無いともいわれており、その点が風俗店と異なるのだとも言われます。
そういった定義や傾向からすると、いかにキャストの女性が扇情的な服装をしていたとしても、性的な行為を顧客が行うことを禁止している店舗は多いと思います。
そういう禁止規定があるとすれば、キャストに誘惑されようがされまいが、キャストの身体に、性的な行為を行うと、不同意わいせつ罪や各県が定める迷惑行為防止条例違反に問われるリスクは高いです。
行為の程度がより強く、わいせつ行為と判断されれば、不同意わいせつ罪という罪名で捜査を受けるリスクがありますし、いわゆる痴漢と同様の程度であれば、条例違反として捜査されるリスクがあるということです。
3.なぜ性的サービスが行われないはずのメンズエステでトラブルが多発するのか
複数の相談を受けてきて、現場の状況を想像する限り、メンズエステは、刑事事件化リスクが少なからずあることを覚悟して受けるサービスではないかと思ってしまいます。
そう思えるくらい、相談事案では決まって、キャストと顧客の身体同士の距離が近づくというサービスの性質からトラブルが発展しています。また、キャストの服装の露出度が高いという事情も、相談事例に共通しています。
もちろん、性的な行為について、キャストが同意していたと確かに言えるのであれば、不同意わいせつ罪や迷惑行為防止条例違反で起訴されるおそれを、かなり抑えることができるでしょう。
しかしながら、事件現場には、キャストと顧客以外に目撃者はいないでしょう。また、録音や録画があるわけでもないでしょう。
そういう観点からすれば、少なくとも、仮想事例のようなケースでは、常にリスクがあると思っていただき、不用意な行為は厳に慎まれた方が良いと思います。
4.最近ではむしろメンズエステ側が美人局を行って検挙されるケースもある
昨今、この手の相談が多いのは、メンズエステの中に、トラブルを意図的に起こし、利用者から示談金や違約金と称して不当な金員を請求する業者が混ざっているからかもしれません。
実際、メンズエステ側の運営者が、利用者への恐喝行為などの容疑で検挙されるというケースがニュースになることもあります。
仮想事例についても、不自然な点があります。
キャスト自身が誘惑するような言動を行ったかもしれないということもそうですが、触られた時点で施術自体は中断されず、一通り済んだ後に奥から店の人が出てきたという点。
接触禁止や違約金の規定が、しっかり利用者のわかり易いように説明・記載されていたかどうかという点。
それから、示談を取り持つのが店舗ということも気になります。
もし刑事事件の示談をするのであれば、それは、被害者と直接行わなわなければなりません。お店に払う違約金と、被害者への謝罪金というのとでは、意味が違ってきます。支払ったお金は、しっかり女性に渡されるのでしょうか。
私がこれまで相談を受けてきたケースの中にも、いわゆる美人局に当たるケースもあったと推測しています。
5.それでもメンズエステでのトラブルは一定数が刑事事件になります
とはいえ、そういった相談の中に、キャスト自身が実際本当に被害をうけ、被害届を出して刑事事件として捜査され出すというケースは一定数存在するのも事実です。
その場合、やはり、実際に被害を受けたキャストの方自体が、その事件当時から顧客の行為を問題視するようなアクションをすでに取っていることが多い印象ですが、美人局かどうかという線引きが難しいところもあります。
刑事事件となった場合、被害者自身との直接示談を行うことを試みて不起訴を目指すという弁護方針が考えられます。示談さえ成立すれば、不起訴になる可能性も十分にあります。
事案によっては、キャストには、単に「触れてしまった」のであり、「わいせつ」な行為を行っていない、または「触っていない」といって、犯罪の成立を争う弁護方針もあるとは思います。
しかし、それで無罪を勝ち取るのは相当ハードルが高いでしょう。
6.お金を要求されてご心配であればまずは弁護士にご相談下さい
いずれにしましても、仮想事例のように、違約金全額をお店に支払う前に、これでいいのか弁護士にご相談されるのは、賢明なことだと思います。
今回紹介したように、メンズエステ側が恐喝容疑などで逆に検挙されることも出てきたため、以前よりも利用者が警察に相談しやすくなったとは思いますが、やはりそれでもいきなり相談するのもご心配かと思います。
そんな時、まずは弁護士にご相談下さい。
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