国選弁護人から切り替えて執行猶予を獲得した事件
罪名:大麻
解決までの期間:1か月
最終処分:執行猶予付き判決
依頼者:父
1.国選が信用できない
「国選弁護人が信用できないんです」被告人の父親からの電話でした。
聞けば、大麻取締法違反で逮捕された息子には、すでに国選弁護人が付いているものの、連絡が取れず不安であるとのことでした。
国選からの切り替え事件は珍しくありませんので、早速、状況確認のため接見に行くことにしました。
2.やることはやっているが・・・
本人に接見し、状況を聞くと、どうも最低限の手続は行っているようでした。
保釈の申請も出していますし、却下に対する不服申立ても行っていました。
ただ、その手続がどのような意味を持ち、現在どういう状況に置かれているのかを説明していなかったのです。
極めつけは、「こちらで全て進めているので、接見に呼ばないでくれ」と言っていたとのことでした。
これでは、本人との信頼関係は全く築くことはできません。
私からは、現在置かれている状況を説明するとともに、ご両親とも充分コミュニケーションを取って弁護を進めていくことを約束しました。
3.期日の引き延ばし?
正式に依頼を受け、裁判所にもその旨伝えると、意外な事実が明らかになりました。
すでに、国選弁護人との間で裁判の日付が内定しており、それがかなり後になっていたのです。
保釈が認められていない状況では、できるだけ早く裁判を行い、執行猶予判決を得て釈放してもらうことが重要です。
通常、裁判が開かれるのは、起訴から1か月少し後ですが、このケースでは、起訴からなんと3か月ほど後に設定されていました。
これには訳があり、途中で、裁判所の休廷期間(夏と年末年始にある裁判所の長期休暇)を挟んでしまっていたからなのですが、それでも、起訴日から考えれば、休廷期間前に裁判の期日を入れることも充分可能でした。
保釈が認められていない以上、少しでも早い期日にするべきでしたが、実際にはそうなっていなかったのです。
4.期日の変更
通常、一度決められた期日を変更することはありえません。キリがなくなってしまうからです。
それでも、私は、期日が内定していただけで、正式に決められていなかったことに注目し、弁護人が国選から切り替わったこと、保釈が認められず、夏季休廷後になれば、被告人にとっての不利益が大きすぎることなどを説明しました。
その結果、裁判所も休廷前で期日が立て込んでいる中で、予備日を使い、新しく近いところでの期日を設けてくれたのです。
5.即日判決
そして裁判の日には、お父さんに証人として出廷してもらい、全ての審理が終わりました。
通常、判決は、裁判の日から1,2週間後に設けられるのが通常です。
しかし、この時はすぐに夏季休廷に入ってしまうことから、裁判所は、審理が終わったその直後に、続けて判決を言い渡したのです。
この判決は執行猶予付きの判決でしたから、その場で釈放されることになります。
つまり、国選弁護人から切り替わったことで、2か月近く釈放が早まったのです。
一見全ての手続が終わってしまったようにみえても、諦めず探せば、依頼者にとって何かしら有利なことができる。そう確信した事件でした。