勾留の執行停止により、葬儀への出席が可能となった事例
罪名:覚醒剤取締法違反等
1 事案の概要
本件は、覚醒剤の使用などにより逮捕及び起訴されたという事案です。
同種前科があることや、一部否認していることから、起訴後の保釈も認められず勾留が継続していました。そんな中、本人の親族が亡くなったため、何とか葬儀に出席できないかと相談を受けました。
2 起訴後の身柄解放
起訴された後の被告人の身柄解放としては、保釈が一般的です。
保釈保証金を納付することと引換えに勾留が解かれ、日常生活に戻ることができます。裁判において実刑判決が出ない限り、その後も身柄が拘束されることはないのが一般的です。
しかし、本件のように、事情により保釈が認められないものもあります。実刑が見込まれる場合や否認している場合には、保釈が認められ難い傾向があります。
3 勾留の執行停止
保釈が認められない中で、特定の事情のために一時的にでも身柄解放を求めるための手段として、勾留の執行停止というものがあります。
これは、親族の危篤や葬儀といった特定の事情がある場合に、それらへ対応するのに必要最低限の時間だけ勾留を停止して、一時的に釈放するというものです。
親族が危篤の場合には面会時間だけ、葬儀の場合には出席する時間だけ外に出られるというものです。あくまでも必要最低限の時間、一時的に釈放するというものですので、その後また勾留されることになります。
限定的な身柄解放であるため、保釈が認められないような事案であっても、勾留の執行停止は認められる場合があります。
4 本件での活動
本件でも保釈が認められない中、葬儀へ出席する必要が出来したため、勾留の執行停止を申し立てました。
しかし、これに対して検察官が強い難色を示し、また裁判所としても外に出た際に罪証隠滅を図るおそれがあり得るということで、厳しく考えているようでした。
そこで、弁護人が検察官及び裁判所と交渉し、罪証隠滅等のおそれがないこと、親族が監督することなどを粘り強く説明しました。
そして、最終的には弁護人が釈放中の被告人に同行して監督することを約束し、これを条件に勾留の執行停止が認められました。
5 本件での結果
このようにして勾留の執行停止が認められ、本人は無事に葬儀に出席することができました。親族の葬儀に出席できたことはもちろん、一時的にでも外の空気を吸うことができ、本人としてもとても喜んでいました。
本件では親族による監督のみでは不十分ということで、弁護人による同行及び監督が認められるための決め手となったものと考えられるでしょう。