検察示談の話
訳のわからないタイトルですが、要は「検察を制するものが、刑事示談を制する」という話しです。私選で起訴前弁護をする場合、示談が非常に大きな意味を持ちます。そして、示談が出来るかどうかを左右する一番の要因は検察にあるということです。これは、多くの弁護士が知っていることですが、何故か誰も話しませんし、本にも書いてないんですね。まず、示談をしたいと思っても、通常、被害者の名前も連絡先も分かりません。これは被害者の同意を得た検察から教えてもらうしかないんですね。
つまり、最初に被害者側にコンタクトできる検察が、被害者に何と話すかによって結果が全く違ってくるのです。高校生への痴漢で、親が怒っていて、弁護士に連絡先を教えることなどできないと言われていた事件がありました。ところが、新たに担当になった検察官が話したところ、すんなりと連絡もとれ、最終的に許してもらえたことがありました。後の検察官からも、「前の人はどういう話し方をしてたんでしょうねぇ」なんて言われましたが、まさに私の実感でもあります。「弁護士が話したいと言ってるけど、どうします?別に話すことも無いでしょうけど」なんて言い方を検察にされたら、普通の被害者なら、「そうですね」と答えるでしょう。
これに対して検察が、被疑者の反省、被疑者の妻・母・子供の苦悩、誠意の表れとしての賠償金などを説明して、「話しを聞くだけ聞いてみたらどうでしょう」と言ってくれれば、会ってもらえる可能性は増し、その後の示談にも良い影響があるのは間違いないところです。こうなりますと、弁護側としては、検察側が被害者に被疑者側の状況を伝えられるような情報提供をすると共に、被害者に対して親身な話し方をしてくれるように、人間関係を良くしておくことが重要になります。さらに、可能ならば、被害者をどの様に説得するのかについて、演技指導!までしたいところです。
私など、示談がうまくいかないときに、検察官に頼み込んで、被害者と話してもらったこともありました。「一般論しか話せないよ」と言われましたが、当方の示談額など、相場に比べても随分とよいものだと分かるように被害者に話してくれたようで、一気に早期示談が成立したこともあります。弁護士に対しては、騙されるのではないかと構えている被害者も、検察官なら信頼するということは、残念ながらあるんですね。このように、示談のために検察と友好関係を築こうとすると、戦うべきときにも戦えなくなるということはあるでしょう。そのことが、将来の刑事司法にとってマイナスだろうということも理解できます。しかし、私としては、将来の司法制度より、現在自分を信頼し、事件を依頼してくれたお客様のために、一番有利になる方法を選ばざるをえないと考えています。
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