元職員が、児童ポルノの動画を持っていた疑いで書類送検されたとの報道!?
1 報道の概要
公安調査庁の元職員が、児童ポルノの動画を持っていた疑いで書類送検されました。児童買春・児童ポルノ禁止法違反の疑いで書類送検されたのは、公安調査庁の元上席調査官の男(40)で、パソコンに児童のわいせつな動画を2点所持していた疑いが持たれています。動画は、男が約20年前にインターネットからダウンロードしたものだとのことです。
男のパソコンからは他にも数点、児童ポルノの動画が見つかっていて、調べに対し「自分にとって貴重な映像だから持っていた」と容疑を認めているとのことです。
2 児童ポルノ所持の罪
児童ポルノは、所持しただけでも罪となります(児童ポルノ禁止法)。そして、今回の事件のように、児童ポルノ禁止法が制定される前に入手したものであっても、現在も引続き所持していれば、同様に罪が成立します。
かつては本邦においても児童ポルノが合法的に流通しており、入手することができたが、仮に当時は合法的なものであっても、現在は児童ポルノ禁止法違反となるおそれがあります。過去に児童ポルノを入手し、今なおそれを手元に残しているような場合には、速やかに処分すべきだろう。
3 児童ポルノを要求することの罪
児童ポルノ禁止法は、児童ポルノを所持した場合だけでなく、児童ポルノを製造することも禁止し、処罰対象としています。製造することには、自ら児童の裸等を撮影する場合だけでなく、児童に自らの裸を撮影させて、その動画像を送信させる行為も含まれています。
この点、児童ポルノ禁止法そのものは、製造の未遂については規定していないです。つまり、児童に撮影させようとして命令したけれども児童が応じなかった、といった場合は処罰対象となっていないです。
しかし、刑法においては、16歳未満の者に対して性交等の様子をとって映像を送信するよう要求することを禁止されており、処罰の対象としている(182条3項)。
被害者の年齢が16歳未満であり、対象が性交等をしている様子に限定されてはいるものの、一定の範囲で児童ポルノ製造の未遂を処罰する性質を有するとみることができます。
4 行為者の認識に関する問題
犯罪は、犯罪になると知っていて行った場合にのみ罪となるのが原則です。
例えば児童ポルノ禁止法の所持の罪でいえば、当該動画像が児童ポルノに該当する(被写体が児童である)という認識を持った上で所持して初めて罪が成立するということです。もっとも、行為者の認識は外部からは分からないため、最終的には客観的な事情から判断されることになります。
つまり、動画像の被写体がその身体的特徴等から18歳未満であることが明らかであれば、どんなに本人が「児童ポルノだとは思わなかった」と弁明したとしても、通用しないということです。
5 児童ポルノ規制
このように、児童ポルノ禁止法によって所持や製造が処罰対象とされているだけでなく、刑法によって映像を要求することそのものも処罰対象となっています。刑法182条は令和5年の改正によって新設された規定であることからも、近年は幼い子ども相手の性犯罪が規制強化されている傾向がわかります。
そして、法規制の強化に伴い、実際の取締りも強化されていくであろうことは明らかです。
児童ポルノを所持、製造してしまった場合や、幼い子ども相手に性的な映像を要求してしまった場合など、罪を犯してしまったおそれがある場合には、専門家に相談し、場合によっては自首するなど、速やかに適切な対応を講じる必要があるでしょう。
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