盗撮・のぞきの弁護
この記事は、弁護士杉浦智彦(神奈川県弁護士会)が、2019年9月7日までの自らの知識及び経験を元に執筆しています。
目次
1.盗撮とは何か
盗撮とは、被写体の同意を得ることなく撮影をすることをいいます。のぞきとは、対象者の同意なくその対象者を見ることをいいます。「盗撮罪」や「のぞき罪」という犯罪はありません。犯罪に該当するかどうかは、その対象者の年齢、場所や状況によって変わります。場合ごとに、刑罰の重さも説明します。
2.刑罰について
①公共の場所や乗り物で、下着を撮影しようとした場合
電車やバスという公共の乗り物や、駅のエスカレーター、ショッピングモールなどの、誰でも立ち入ることができる公共の場所で下着を撮影しようとすることは、被害者の年齢にかかわらず、全国どの都道府県でも、迷惑行為防止条例違反となります。実際に撮影をしていなくても、カメラを向けていること自体が犯罪となります。
刑罰の重さの上限は、都道府県ごとに変わります。たとえば神奈川県の場合の上限は、常習でない場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金、常習の場合は2年以下の懲役または100万円以下の罰金です。
どの都道府県でも、初犯のスマートフォンでの盗撮の刑罰の相場は、20万円から30万円の罰金刑です。罰金刑も前科です。
当事務所では、神奈川県周辺の駅ごとの盗撮事件の状況についても解説しています。 詳しくはこちら
②公共の場所や乗り物で、服の上や脚を撮影しようとした場合
公共の場所や乗り物で、ズボンやジーンズの上から撮影したり、脚を撮影したりすることは、「卑わいな言動」と判断され、全国どの都道府県でも、迷惑行為防止条例違反となります。最高裁判所も、ズボンの上から撮影したことが「卑わいな言動」に該当し、北海道のいわゆる迷惑行為防止条例違反に該当すると判断しています(最判平成20年11月10日最高裁HP掲載)。
刑罰の重さの上限は、都道府県ごとに変わります。たとえば神奈川県の場合の上限は、常習でない場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金、常習の場合は2年以下の懲役または100万円以下の罰金です。
刑罰の相場については、私自身の担当事件はすべて不起訴となっているため経験はないのですが、公表されている裁判例(札幌高判平成19年3月9日判例タイムズ1271号346ページなど)を確認する限り、初犯で20~30万円の罰金刑が多いのではないかと思われます。
③公共の場所や乗り物で、下着をのぞき見た場合
公共の場所や乗り物で下着をのぞき見る行為は、被害者の年齢にかかわらず、全国どの都道府県でも、迷惑行為防止条例違反に該当します。盗撮の場合と異なり、単にのぞき見ようとしたという状態で処罰されることはありません。
刑罰の重さの上限は、都道府県ごとに変わります。たとえば神奈川県の場合の上限は、常習でない場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金、常習の場合は2年以下の懲役または100万円以下の罰金です。
④住居、浴場、更衣場、便所で、盗撮・のぞきをした場合
公共の場所以外の場所で盗撮やのぞきをした場合、東京都や神奈川県であれば、迷惑行為防止条例違反になります。千葉県や埼玉県の場合、公共の場所以外の盗撮などは迷惑行為防止条例の対象外になり、軽犯罪法違反になります。軽犯罪法違反の場合、刑罰の上限は、1,000円以上1万円未満の科料となります。
浴場や更衣室で盗撮し、被害者が18歳未満の場合は、児童ポルノ製造罪が成立することがあります。児童ポルノ製造罪の刑罰の重さの上限は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金です。初犯で悪質でない案件の場合、30万円程度の罰金になることが多いです。
また、盗撮目的やのぞき目的で住居、更衣室、トイレなどに侵入した場合は、建造物(住居)侵入罪が成立します。建造物侵入罪の刑罰の相場は、10万円程度です。
3.警察の捜査の特徴
盗撮事件やのぞき事件を担当する警察官は、「生活安全課経済保安係」か「地域課」のいずれかに所属しています。
担当警察官は、初犯であっても、これまで繰り返し盗撮などをしていたことを前提にして取り調べをしてきます。しかしながら、過去の盗撮について、事件として立件される事例は少ないですので、正直に話をするのが得策です。ただし、職場での盗撮の場合は、過去のものも立件される場合があります。
また、性犯罪という性質上、加害者は被害者と接触することがないよう、事件直後から被害者と別室で取り調べを進めます。
警察は犯人に対して被害者情報を教えることができません。そのため、もし示談を希望する場合、弁護士を選任する必要があります。弁護士を選任することは、示談を希望する意思の現れでもあるので、警察は、盗撮事件などで弁護士を選任したとしても、「反省していない」と考えません。むしろ、取り調べでの追及が緩やかになることも多いです。
4.後日逮捕の可能性
盗撮事件やのぞき事件は、後日逮捕の可能性があります。犯人が現場から逃走し、かつ被害者の処罰意思が強い場合、警察も捜査をせざるを得ず逮捕される事例があります。逮捕の時期は、事件から2ヶ月後から半年までの間が多いです。警察は、犯人特定のため、犯行現場及び周囲の防犯カメラの映像、SUICA等の履歴等の情報を収集しています。
後日逮捕を避けるためには、自首をすることが有効です。自首については、こちらの記事を参照してください。
5.逮捕されてしまった場合の報道
逮捕された場合、その逮捕された人の氏名などの情報が報道機関に伝わります。そのため、報道される可能性があります。報道されてしまう場合は、職場の信用を失い、仕事を失うことがあります。
6.逮捕された場合の早期釈放に向けた弁護活動
当事務所はこれまで、盗撮事件の被疑者の早期釈放を実現しています。弁護士をつけて示談する意思があることを示し、誰かが身元引受人となること、被害者との接触を避ける誓約をすることで、1~2日程度で釈放されることが多いです。
報道がなされていない事例の場合、職場の維持ができる場合が多いです。
7.前科を避けるための弁護活動
盗撮やのぞき事件の場合、罪名を問わず、基本的には被害者と示談すれば、不起訴になる可能性が非常に高いといえます。
前科がある場合でも、示談すれば量刑はかなり軽くなりますし、前科からの経過期間によっては、不起訴を目指せる場合もありますので、とにかく示談が最重要と言えるでしょう。
基本的に、被害者は、加害者本人に連絡先を教えることはありませんので、弁護人を付けた上で、その弁護士限りということで、捜査機関を通して、連絡先を教えてもらうことになります。
弊事務所では、「●円で示談するかどうか決めてほしい」といった単純なやり取りはせず、被害者の複雑な心境に寄り添って、少しでも納得してもらう形での示談を目指します。その過程で、謝罪文や、生活圏・通勤経路の調整なども有益です。
また、専門医療機関への通院は、ご自身の更生だけでなく、反省のアピールになります。当事務所では、懇意にしている精神科のクリニックの紹介も可能です。
8.弁護士費用の相場と当事務所の費用
盗撮・のぞき事件の弁護士費用の相場は、示談金を除き、総額40万円から150万円と言われています。弁護士の経費には、①示談交渉の諸経費、②検察官などとの交渉のための人件費、③ご本人様及びそのご家族のフォローのための人件費、④各種広告費などがあります。弁護士費用の価格の差は、①~④までに、どこまで費用を割くか、また利益率の差となります。
当事務所は、初犯の盗撮事件は、着手金10万円、不起訴になった場合の成功報酬が40万円の合計50万円です。示談金以外の実費はかかりません。
当事務所は、横浜をはじめとする首都圏で長年の経験があり、検察官との交渉や被害者との示談交渉に慣れていることから、人件費を抑えつつ成果を得ることができています。また、他事務所に比べ、不安になっているご本人様やご家族のフォローを重視しています。そのため、合計50万円の弁護士費用は、とてもリーズナブルなものになっています。
また、不起訴にならない場合は、着手金の10万円のみの費用となり、その点でも経済的です。
当事務所は年間5000件以上のご相談、毎月10件以上のご依頼を受けております。経験と実績があり、ご本人様やご家族のフォローに定評のある当事務所に、まずはお電話ください。年中無休、24時間ご相談を受け付けております。
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