早期示談により不起訴を獲得した事例
罪名:傷害
最終処分:不起訴
1.傷害事件の特徴
普段、真面目な人や温厚な人でも、お酒を飲んで気が大きくなり、ちょっとしたことで他人と口論となり、相手に怪我をさせてしまった、というケースは、非常に多くあります。
忘年会、新年会、新人歓迎会や納涼会などのほか、同僚、友人、恋人や家族とお酒を飲む機会は様々ありますが、日常起こりうるトラブルとして、ふとした瞬間に自分自身が加害者になってしまわないように気をつけなければなりません。
一般的には、相手を殴った場合は「暴行罪」、殴って怪我をさせてしまった場合は「傷害罪」というように区別されますが、「傷害罪」のほうが法定刑は重く、初犯の傷害事件であっても、ほとんどが罰金刑となります。
このような罰金刑などの前科がつくことを避け、不起訴を獲得するためには、被害者との間で示談が成立していることが重要です。
示談を成立させるためには、被害者との話合いが必要になりますが、傷害事件の被害者は、加害者に対して怒っているか怖がっているかのどちらかですので、そもそも話合いに応じていただけないことも多く、当事者同士の話合いはまず不可能です。
そこで、加害者側の代理人として弁護士が間に入って話合いをし、示談が成立するよう交渉をしていかなければなりません。
つまり、不起訴を目指すには、弁護士による交渉と示談の成立が重要になってくるのです。
このような傷害事件の特徴を前提に、弊所で取り扱った案件で、無事不起訴処分を獲得することができた事例を2つ紹介いたします。
2.タクシーの運転手に対する傷害事件において不起訴を獲得した事例1
この事例は、ご依頼者様が、飲酒後に乗車したタクシーの運転手に対して、些細なことでかっとなり暴行を加え、怪我をさせてしまったというものでした。
ご依頼者様は、当時を振り返り非常に反省と後悔をしていましたが、それ以外に、ご依頼者様の職業上、前科がついてしまうことはどうしても避けたいという事情がありました。
ご依頼後、まずは弁護士から担当の警察官へ連絡し、被害者への取次をお願いしました。被害者のなかには事件に関わりたくないと考える方もいますので、まずは警察官や検察官に被害者へ連絡を取ってもらい、弁護士に連絡先を教えてもいいかを確認してもらいます。被害者から、連絡をしてもいいと言っていただいて初めて、弁護士から被害者の方へ連絡をすることができます。
この事例では、被害者のタクシー運転手ご本人ではなく、勤務先であるタクシー会社の責任者が窓口となって、弁護士との話合いに応じていただきました。
上で述べたとおり、当事者同士では感情的になって話合いはできませんが、この事例のように、間に人が入ることにより、事件について冷静に話合うことができます。被害者側の最大の関心事は、加害者側が本当に反省しているのか、本当に謝罪する意思があるのか、というところですので、最終的にはそれをいかに理解してもらえるかが示談の成否を分けるといえます。
この事例では、タクシー会社の責任者と実際に面談する機会を設けていただきましたので、弁護士がご依頼者様と同行し、ご依頼者様と一緒に謝罪をさせていただきました。ご依頼者様の謝罪の場がもてたことにより、ご依頼者様の反省と謝罪の意思が伝わり、治療費などを支払うことを内容とする示談にも快く応じていただけました。示談書には、「宥恕文言」という、加害者を許すという趣旨の一言もいただけました。
結果、この事例においては、検察官が示談の内容を考慮した上で、不起訴処分とすることを決めてくれました。
3.記憶がなくなるほど泥酔していた暴行事件において不起訴を獲得した事例2
この事例でのご依頼者様は、路上で見知らぬ人に対し胸倉をつかむなどの暴行事件を起こして、警察も関与していたのですが、当時、泥酔していてその事件の記憶がないということでした。
しかし、防犯カメラやドライブレコーダーにその当時の映像が残っていましたので、客観的に事実関係を争うことは難しいものがありました。
ご依頼者様としても早期の事件解決を希望しておりましたので、上記2の事例と同様、弁護士が間に入って、警察官から被害者の連絡先を教えてもらい、被害者との示談交渉を開始しました。
被害者の方は、当初、弁護士に対しても不信感をもっていましたが、何度も電話やメールでやりとりをして、ご依頼者様の反省の状況を伝えたり、弁護士の役割などを説明するうちに、被害者の方とも信頼関係を構築することができ、最終的には信頼していただいて、示談についても快く応じていただくことができました。
結果、こちらの事例も宥恕文言つきの示談が成立し、無事不起訴処分を獲得することができました。
この事例のように、加害者と関わりたくないという被害者との間では、いかにこちらを信頼していただけるかが重要となってきます。
4.最後に
以上のとおり、不起訴を獲得するためには示談が成立していることが重要ですが、示談はあくまで金銭的な解決であり、そこに至るまでのプロセスこそが重要です。
弊所は刑事事件の分野に特化し、類似事例を多数取り扱っていますので、示談交渉も早期かつ柔軟な対応が可能です。