強姦致傷罪などに問われた男性の控訴審判決で、被告側の控訴を棄却との報道!?
1 報道の概要
2005年、当時高校1年の女性に性的暴行で心的外傷後ストレス障害(PTSD)を負わせたとして、強姦致傷罪などに問われた、45歳の無職の男性の控訴審判決で、東京高裁は8日、懲役8年の一審判決を支持し、被告側の控訴を棄却しました。
PTSDが事件によって生じたかどうかが争われました。被告のDNA型が現場の遺留物と一致した18年10月時点では強姦罪の時効(10年)が成立。検察は、女性にPTSDを負わせたことが「傷害」に当たると判断し、強姦致傷と強制わいせつ致傷の罪で20年7月に起訴された。両罪の時効(15年)成立の4日前でした。
以上の事案をもとに、法的に問題となる点を解説します。
2 刑事事件の時効
刑事事件には時効があります。どんな悪いことをした犯人でも、時効期間が過ぎると、もはや処罰できなくなります。一般の感覚から考えると、これは相当不当なことに思えます。「逃げ得」を認めることになるからです。
ただ、昔の事件の場合、証拠が必ずしも残らないことから、冤罪の可能性がますこともあります。また時間の経過により、被害者感情もおさまってくることもあるということで、時効の制度はいまだに残されています。
3 時効に対する批判
一方、少なくとも重大犯罪に対しては、時効など認めるべきではないという主張にも、非常に強いものがありました。そこで、10年以上前に、殺人や強盗殺人などに対しては、時効の制度を撤廃しました。
ただ、強姦罪などの重大犯罪については、依然として時効の制度は残ったままでした。そんな中で、強姦の時効期間10年が経過した後に、本件が発覚したのです。
4 PTSDとは?
PTSDというのは、精神的に深い傷を負うことをいいます。フラッシュバックが起こり、悪夢にうなされ、日常生活を満足に怒れないようなこともありえます。
その一方、本当にそのような精神的な苦痛が生じているのか、必ずしも外部からは分からないところもあります。そこで、特に民事事件などで、損害賠償の金額を決める際に、本当にPTSDが生じているのか、争われることになります。
このように、PTSD自体が明確なものとは言えないので、刑事事件での判断に使用するのは、慎重になっていたところがあります。今回は、時効期間を延ばすという目的もあり、強姦罪にPTSDを加えて判断することを認めたものと言えます。
5 本件の弁護活動
本件の場合、まずはPTSDを認定しての時効期間の延長が認められるのかを争わざるを得ないです。
ただ、それだけではなく、たとえ時効が成立していても、自己の犯した犯罪により苦しんでいる被害者がいるため、できる限りの謝罪と損害賠償を行うお手伝いをするのが、弁護活動として重要になります。