コロナウイルスの撒き散らしは傷害罪?業務妨害罪?

この記事は、横浜パートナー法律事務所の弁護士が執筆しています。

 

1 事件の概要

横浜市在住の男性は令和2年2月16~23日に妻ら3人とエジプトへ旅行後、同25日に37度5分以上の熱が出始めた。

症状が悪化したため、3月3日に市内の医療機関を受診。4日に別の医療機関で肺炎と確認されて入院し、5日にコロナウイルス陽性と判明した案件。

当男性は、発熱後も、2月26日にスナックでカラオケ、2月25日から5回ほどスポーツジムを利用していました。

なお、このスポーツジムは、当該男性の陽性診断前に、休業していたとのことでした。

 

このようなコロナウイルス関係の事件が、愛知県蒲郡のほか、いくつか発生しています。

このような場合に刑事事件に発展するかの解説をいたします。

 

 

2 コロナウイルスの可能性を認識していた場合

 当該感染者が、コロナウイルスの可能性を認識しながら、人に感染させてしまった場合、「傷害罪」という犯罪が成立します。

 

 かなり前の事件になりますが、最高裁判所で昭和27年6月6日に判決がされた事件では、性病の一種である淋病であることを隠して、同意の下で性行為を行ったところ、相手が淋病に感染した案件で、傷害罪の成立を認めています。

 

 本件も、コロナウイルスに感染している可能性、及びコロナウイルスが他人に感染しやすいということを認識しながら、人と接触をしにいっているので、もし感染者が出てきた場合は、傷害罪に該当するといわざるをえません。

 

 しかしながら、実際に刑事事件に発展するのは、かなり悪質な事案のみだといえます。なぜならば、被害者が、その方から感染したことを立証することが困難な場合が多いからです。具体的には、捜査機関は、当該被害者が、別ルートから感染した可能性がないことを証明しなければならず、かなり大変なのです。

 

 この横浜の事件では、たしかに発熱後にスナックやジムで接触を行っていたとはいえますが、捜査対象にはなりにくいように思います。

 

 

3 「俺はコロナウイルスだ」といって施設に入って営業停止にした場合

 このような事例は、人に危険を与える脅迫行為の一種によって業務妨害をしているため、威力業務妨害罪が成立するものと考えられます。実際にコロナウイルスかどうかは関係ありません。なお、実際に業務停止になるかどうかは関係がないと言われています。

 

 本件の事件では、自らコロナウイルスを伝えた事件ではありませんので、威力業務妨害罪は成立しません。

 

 

4 まとめ

 この横浜の事件は、刑事事件に発展する可能性は低いものといえます。しかしながら、一歩間違えれば刑事事件に発展しうるものではあります。

 みなさまも、ぜひご注意ください。

 

 

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