被害者との示談ができなかった事案
罪名:暴行罪
最終処分:罰金刑
1 事件の概要
本件は、依頼者が被害者を蹴とばしたという、単純な暴行事案です。特に被害者に怪我はありません。示談さえできれば不起訴になる事案といえます。
ただ、常識人である依頼者が、我慢できずに思わず蹴とばしたという被害者です。このような事件の場合、簡単に示談ができない場合も多いのです。
2 最初の示談交渉
当事務所の担当弁護士が、本件の示談に向けて被害者と交渉を開始します。被害者は大変お怒りで、弁護士を何度も呼び出し、示談の内容にも細かい注文を付けてきます。その間、事務所の方にも被害者から電話が何度もかかってきて、担当弁護士が居ないとなると、大変立腹されます。
何度も示談書を作り、最終的には相手の言う通りの内容としたのですが、最後の最後で、弁護士の態度が気にくわないということで、示談を拒否してきました。
3 弁護士の交代
そこで、当事務所で弁護士を交代し、代表弁護士が示談交渉に臨みます。当方に無礼があったのではないかとお詫びし、なんとか示談交渉の再開を依頼します。被害者から回答がないので、検察官にお願いし、検察官から被害者に連絡し、何とかもう一度示談の話を進めてもらえることになりました。
そこで何度かやり取りして、いよいよ示談が出来そうというときになって、「示談するのはいいが、示談できたことを検察官に知らせることは禁止する」と被害者が言ってきたのです。それでは、示談することにより不起訴を目指すという目的が達成できません。
4 検察官との交渉
そこで、再び検察官に連絡し、何とかお願いしてもらうことにします。しかしながら検察官からも、「被害者に話すと、『あんたは弁護士の味方か!』と怒られてしまった」などと言われ、これ以上の口利きは困難となります。
さらに、「本件の場合、本人の反省や、生じた結果が重いとは言えないことから、示談無くして不起訴に出来ないか」お願いしました。しかし、被害者が絶対に処罰して欲しいと要望している以上、不起訴にすることは難しいと言われました。(不起訴にすると、被害者にその結果が行きます。不満がある被害者は、検察審査会に不服申し立てをすることになるので、検察官はそのような事態を避けようとするのです。)
5 最終結果
本件は、結局罰金刑となりました。ただ、金額は同種事案と比較して、相当低く設定して貰えました。
大変残念でしたが、依頼者が当事務所の弁護活動を高く評価してくださったことは、大変嬉しく感じました。弁護士として失敗することは避けられませんが、最後の最後まで最善を尽くすようにいたします。