奇跡的に不起訴となった児童買春事例
解決までの期間:3か月ほど
最終処分:起訴猶予
依頼者:本人
在宅の児童買春事件
本件の依頼者は、18歳未満の高校生を買春したとして、捜査対象となった人です。被害者である高校生が補導されたことから、事件が発覚しました。捜査対象になって直ぐに、事務所に相談に来てくれました。
当初は、逮捕勾留も心配されたところです。ただ、本件は、被害児童からの強い働きかけがあったという事案でもあったので、身体拘束は成されずに済みました。本人は非常に心配していましたので、弁護士の方からも警察に連絡して、事情をよく説明し、捜査にはできる限りの協力をすることを約束して、逮捕勾留をしない旨事実上の約束を得ました。依頼者も大変安心して頂けました。
児童買春はしないよう注意していた
被疑者によると、児童買春が犯罪であることは十分に理解していたので、間違ってもそのようなことをしないように十分に注意していたとのことです。具体的には、出会い系などで相手と約束をして、現実に会ったときに、相手が18歳未満か確認して、そうであれば断って帰ってしまっていたということです。実は、今回の被害児童の方も、そのような流れで、最初に会ったときには、何もしないで別れたということでした。(この辺の事実は、児童本人も話しているとのことで、捜査機関も掴んでいます。)
偶然の2度目の出会い
ところが、今回の被害児童には、偶然また出会い系の場で会ってしまったということです。会うまでは、以前の自動と同じ人だとは気が付かなかったのですね。2回目ということで、何となく運命的なものも感じたし、続けて断るのもなんだか悪いような気がしたということです。そこで、今回は被害児童と関係を持ってしまいました。その被害者が補導されたことから、今回の刑事事件となったわけです。
事件の受任と見通し
警察の取り調べ段階から、当事務所で本件を受任しました。そのときに、買春事件の弁護について次のように説明しておきました。
・買春事件は、非常に厳しい評価を受ける。下手をすると起訴されて正式裁判となることもある。
・罰金刑になるのが当たり前で、不起訴としてもらえるケースはかなりまれである。
・ただ、検察官によって、処分に違いの有るのが児童買春。人によっては、示談や贖罪寄付を評価して、不起訴としてくれる人もいる。
・当事務所では、不起訴となった児童買春事件の一覧表(事案の概要や担当した検察官名付き)があるので、それをもとに検察官を説得することはできる。
・不起訴の前例を出せば、考えてくれる検察官もいる。
・ただ、買春事件の場合は、多くの検察官が機械的に処罰することを選択するので、可能性は低いと覚悟して欲しい。
依頼者は、上記を理解したうえで、可能性がわずかでもあるならかけてみたいということで、当事務所に弁護活動を依頼されました。
検察官からの呼び出し
弁護士は、被疑者の依頼を受け、事件が検察庁に移るのを継続して確認していました。そして、検察に送致された翌日に、「担当検事が決まるころだから、検察庁に連絡しよう。」と弁護士が考えていたとき、依頼者がから連絡がありました。担当の検察官から、依頼者に出頭要請が来たというので。わずか1週間先の出頭です。しかも、出頭要請と共に「本件は罰金にするつもりなので、5-60万円持参してほしい。」との伝言まであったということです。この検察官は、機械的に処分を決める人のようです。それにしても、呼び出しと同時に、罰金の持参まで要求するというのは、さすがにあまり聞いたことが有りません。
検察官との面会
そこで、弁護士の方で、検察官に面会を求めました。検察官は会ってはくれましたが、まさに取り付く島がありません。「児童買春事件の場合、最低でも罰金と決めています。何かあっても、結論には影響しません。」とのことです。他の検察官が不起訴にしている事案を説明しても、「他人がどうあれ私の考えは変わりません。」とのことです。さらに、被疑者本人の常習性がないこと(一度目は断っていること)を説明しても、「特にそれが有利な事情とは思えません。」とのことでした。
これはどうしようもないかと感じていたのですが、検察官との雑談の中で、本件の被疑者を呼ぶ翌日付で、検察官は他の検察庁に移転することが分かりました。それもあって、急いで処理をしようとしていたのでしょう。
弁護士としては、「もし違う検察官が担当になったら、ほんのわずかでも可能性があるかもしれない。」と思ったのです。
略式手続きの拒否
以上のことを依頼者に説明して、「可能性は低いが、検察官に対して略式裁判を拒否すれば、事件は次の検察官に引き継がれることになる。そこにほんのわずかだが、可能性が生じる。ただ、拒否するには相当の勇気がいる。検察官からの相当強いプレッシャーが予想される。そこを我慢して拒否しても、うまくいく可能性は非常に低い。」と伝えました。本人は考えますとのことでしたが、相当参っているように感じられました。
そんな中、当日被疑者本人から、「体調が悪くて、検察庁に行けなかった。」との連絡がありました。特に検察庁に連絡もできなかったとのことです。
新検察官との交渉
そこで、弁護士の方から検察庁に連絡をいれて、本人が体調を崩したことを伝えました。さらに、数日後に新しい担当検察官が決まると、電話で少し話したのち、面会を求めたのです。
電話で話した感じでは、新検察官も買春事件は少なくとも罰金刑が当然だということのようでした。ところが、会って話してみたところ、他の検察官で不起訴としている事案があるのなら、自分も検討してみるという感じの話に代わってきたのです。そういう中で、検察官から、「不起訴にするといった約束はできないけれども、示談したいなら被害児童の保護者にとりつぎます。」との言葉が出てきたのです。
被疑者者の決断
示談をするかについて、依頼者に相談しました。検察官としても、不起訴の約束はできないと言っている場合、「それなら示談は諦める。」という依頼者も沢山います。しかし、本件の依頼者は、当初からの考えである「可能性が少しでもあるなら、それにかけてみたい。」との考えに基づき、示談を進めることになったのです。
検察官にその旨を伝え、被害者の保護者様の連絡先を教えて頂きました。保護者様と2回会い、結論的には100万円で示談できました。示談書の中に「刑事処分は望まない」との言葉も貰えました。
100万円というのは、罰金の金額と比較しても、かなりの高額と言えます。それで、結果として罰金刑になったらどうしようという不安はどうしても付きまといます。弁護士も被疑者も悩みましたが、最終的にこの示談にかけてみることにしたのです。
奇跡的な不起訴
検察に示談書を提出すると共に、不起訴としてもらえるように重ねて依頼をしました。結果が非常に不安でしたが、示談書提出から2週間ほどで、不起訴の連絡を頂けたのです。児童買春事件としては、かなり奇跡的会結果だったように思えます。
本件の特徴
検察官の変更に助けられたということは大きいでしょう。前の検察官が担当のままでしたら、機械的に罰金刑となっていたはずです。ただ、本件の場合、依頼者が「ほんのわずかでも可能性があるなら、リスクを取ってもトライしてみたい。」という強い意思を有していました。それが、最終的に奇跡的な結果を呼び寄せたように思えます。
児童買春事件で不起訴となることは非常に珍しいだけに、感無量の事件でした。
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