被害総額が2000万円を超える特殊詐欺の受け子の事件で執行猶予を獲得した事例
1. 証券会社を名乗る特殊詐欺が広がっています
みなさんも、オレオレ詐欺という言葉を聞いたことがあるはずです。オレオレ詐欺は、親族と名乗って詐欺師が連絡する詐欺です。
最近、神奈川県を中心に、証券会社を名乗る詐欺が増えています。
証券会社の社員と名乗る人が電話で「あなたが住んでいる★区の人に、○○株式会社という上場会社の株式を購入する権利が交付されることになりました。もし興味がなければ、ほかに買いたい人がいるので権利を譲ってください。」と提案してきます。そして、後日「インサイダー取引」「金融庁が調査」「名義貸しは犯罪」「逮捕」などと不安をあおり、その被害者からトラブル解決名目で現金を送らせるのです。
このような特殊詐欺は、被害総額が一人あたり数百万円から数千万円もあり、世間の耳目を集める犯罪になっています。
2. 特殊詐欺は、現金の受け取り役も実刑
特殊詐欺は、現金を受け取りにいく立場の人がいます。この現金の受け取り役は、「受け子」と呼ばれます。受け子は、バイト感覚で、一回あたり5万円から10万円までの報酬をもらうそうです。受け子は、現金と知らずに受け渡しをすることも多いです。受け子が、仮に荷物が現金であるか知らなくても、組織の共犯者とみなされます。受け子には、とても重い刑罰が課され、初犯でも実刑になります。数万円しかもらっていなくても、何年も刑務所にいかなければいけないのです。
実刑を避けるためには、全額の被害弁償をしなければならないと言われています。過去の事例では、被害総額1400万円のところ、1000万円まで弁済しても実刑だったということがあります。
3. 2000万円以上の被害を出した依頼者の子
依頼者は、遠方に住んでいる方でした。依頼者の子が、オレオレ詐欺の受け子として逮捕されました。
弁護士が、すぐにその子に会うために警察に向かいました。その子は、インターネットの高収入バイトの募集で、荷物の受け取りと言われ、この仕事をしたとのことでした。暴力団と関わりもなく、荷物の中身もよくわかっていなかったのです。
4. 執行猶予を獲得するためには示談するしかない
上述したように、特殊詐欺の受け子の刑罰はとても重いです。刑務所に行かず執行猶予を獲得するには、基本的には示談して全額を弁償するしか方法はありません。
弁護士は、依頼者及びその配偶者と面談し、方針決定をし、なんとかお金を集めてもらうようにしました。依頼者と配偶者は、時間はかかりましたが、いろいろなところからお金を集め、なんとか1500万円近くのお金を集めることに成功しました。
5. 全件起訴されることを防ぎつつ示談交渉
弁護士は、一番始めの受け取りについては、そもそも詐欺の認識がないということで、検察官と交渉しました。その結果、一番始めの詐欺については起訴されなくなりました。
そして、被害金の総額は、1500万円程度になったのです。
弁護士は、起訴されることになる事件について、各被害者のところに直接訪問し、謝罪とともに、依頼者から預かった大切なお金で、全額の弁償を行うことができたのです。
6. 受け子本人の今後のサポート
また受け子本人は、3ヶ月も警察に身柄拘束されていました。弁護士は、その3ヶ月の間、受け子本人を励ましつづけました。
また、依頼者とも相談し、受け子の就業先も探してくることに成功しました。
受け子が二度と同じような犯罪に手を染めないよう、自分の力でお金を稼ぐことのできる仕事を見つけることに成功できたのです。
7. 裁判の結果、ギリギリだが執行猶予に
以上の準備をし、懲役3年ではありましたが、無事執行猶予が付きました。これだけ準備をしても、やっと執行猶予が獲得できる事案です。
示談をするためにも、時間が必要になります。もしご親族が詐欺で逮捕されたと連絡を受けた場合、すぐに弁護士に相談するようにしてください。