科捜研での捜査まで経た痴漢冤罪事件
解決までの期間:約3か月
最終処分:不起訴
依頼者:本人
痴漢の疑いをかけられた
混雑した電車の中で、降り際に、痴漢していたと疑われ、その場で駅員に連れていかれてしまった。
下着の中にまで手をいれてきたというのが、女性の言い分です。
ですが、話を聞くと、カバンを持っていた手以外は、つり革を掴んでおり、「絶対にやっていない!」とうちの事務所に弁護を依頼されました。
科捜研での捜査
本件では、一貫して否認し、本当にやっていないから、DNA検査でもなんでもやって欲しいと、科捜研での検査を依頼しました。
科捜研では皮膚片や、下着の繊維片の有無などを調査できます。
検査の結果自体は、捜査機関の内部資料なので、詳細に知ることはできません。
ですが、その結果は、弁護士が検察官とのやり取りの中で、検察官の話しぶり、反応などをみて徐々に探っていくことになります。
検察官との度重なる交渉
本件では、結果判明後、検察官は「結果は、内部資料だから、一切教えることはできない。」とかたくなな態度となってしまいました。
ですが、何度も検察官に連絡を取り、その他の証人がいそうなのかなど、証拠状況を探り続けました。
その結果、弊所内では、経験的に本件では捜査機関にも証拠が乏しいのではないか、このような結論を得るまで働きかけを続けました。
被害者との示談
検察官としては明言しませんが、証拠状況は乏しいものの、被害者の感情は無視できないと、示談の話しが持ち上がりました。
証拠が乏しいのに示談の話に応じるのは、不合理に思えるかもしれませんが、裁判をやって痴漢冤罪事件で無罪判決をだすのは非常に大変です。
依頼者にとって、裁判が終わるまで不安な状態が続くという心的負担が非常に大きく、また冤罪事件なので、裁判をして周囲に注目されてしまうというのも本位ではありません。
そこで、意図的な痴漢行為はなかったとしても、混雑した電車の中で相手方に不愉快な思いをさせたのだとしたら、その限度で謝罪し、示談することを考えたらどうかということを依頼者に話しました。
依頼者も納得し、痴漢自体は認めないが、不愉快にさせたことについて謝罪する方向でも弁護活動を開始しました。
もっとも、あくまで痴漢の事実は認めないので、あくまで混雑した車内で接触したかもしれないという限度での謝罪で、その限度を超えるのならば、示談に応じる意向はないし、徹底的に戦う準備であると、検察官に対し、硬軟織り交ぜた対応を取っていきました。
粘り強い交渉の末勝ち得た不起訴処分
上記のように、女性側の感情にも配慮し、謝罪の方向でも進めたのですが、すべて認めるわけではないのであれば、示談には応じないとの返答でした。
もちろん、やってもいないことを認めるわけにはいかないので、それではこちらとしても示談に応じられないときっぱりと対応しました。
その結果、検察官は、女性側の感情にも配慮する姿勢をみせたところをも含め、不起訴処分を勝ち取ることができました。