余罪が多数ある強制わいせつ事件で、実名報道を回避した事例
罪名:強制わいせつ
1. 事案の概要
本件は、深夜の路上で、通りすがりの女性に背後から近づき、臀部などを触ったとして強制わいせつで逮捕された事案でした。
逮捕時には住所地や年齢・性別といった情報も含めて報道されたところ、逮捕容疑以外にも同種の余罪が多数あったことから、再逮捕時に再度報道され、またその際には実名も報道されるおそれがありました。
実名報道されれば、事件に係る情報が長期間ネット上に残ることになり、今後の社会復帰の大きな妨げになることも考えられます。本件の被疑者は若年であったため、特に実名報道阻止の要請が高かったといえます。
2. 事件の報道について
事件に関する報道は、①警察が事件について広報し、②かかる広報に基づき報道機関が報道する、という流れで行われます。
どの事件についてどの程度の情報を広報するかは警察の裁量です。全く広報しないこともあれば、実名まで含めて広報することもあります。事件の性質や社会的関心度など様々な要因から決定されます。
3. 報道(広報)の阻止
上述のとおり、広報は警察の裁量です。法的にこれを禁じるということはできません。
もっとも、弁護人であれば報道された場合に生じる、被疑者やそのご家族への影響等を説明し、広報を控えるように警察に申入れをすることができます。
これに応じるかどうかは警察の判断次第ですが、経験上、一定の効果があると考えています。
4. 本件での対応
本件では初めの逮捕時に実名以外の情報を含む報道がなされており、今後再逮捕となれば、実名報道のおそれもありました。
そこで弁護人としては、警察に対し、被疑者が罪を素直に認めて反省していること、被疑者は特別な地位にあるわけでもなく広報の必要性は乏しいこと、実名報道されると甚大な影響が考えられることといった事情を伝えるとともに、被疑者のご両親の嘆願書も添え、実名の広報だけは控えるよう申入れをしました。
その結果、逮捕事実は報道されたものの、実名報道とはならず、さらに初回の逮捕時には報道された住所地や年齢等もぼかしてもらうことができました。
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