深夜の示談交渉によって告訴が取り下げられた事件
解決までの期間:1週間
最終処分:不起訴
依頼者:妻
主人が逮捕された・・・
ある日、事務所に一本の電話がありました。ご主人が逮捕されたという奥様からの電話です。奥様は、事情も分からずパニック状態でしたので、早速、接見に行って本人から話を聞くことにしました。聞けば、事件自体は単純な電車内での痴漢とのこと。ただ、それがエスカレートして、強制わいせつ事件になってしまっていました。
痴漢と強制わいせつの違い
一般的には、服の上から触れば痴漢、下着の中まで手を入れれば強制わいせつ、とされることが多いのですが、法律的に言うと、大きな違いがあります。強制わいせつ罪は罰金がありません。そのため、強制わいせつ事件の場合、起訴されれば、罰金で終わることがないのです。その一方で、告訴がなければ罰することができないという親告罪でもあります。つまり、示談ができて、告訴が取り下げられれば、絶対に不起訴になるのです。
とにかく早く釈放してほしい
普通の会社員であれば、数日の欠勤が命取りになります。「子供もおり、今クビになるわけにはいかない。とにかく早く釈放してほしい。」本人、そして奥様の悲痛な叫びでした。告訴が取り下げられれば、必ず不起訴になりますから、その日にも釈放されることが通常です。「すぐに動く必要がある」私は、さっそく被害者の示談交渉を始めました。
深夜の示談交渉
本人や奥様からの謝罪文、そして私や検察官の繰り返しの説得にも、当然のことながら、被害者は簡単には納得してくれません。それでも、根気強く、何度も会って理解を求めました。そして、連日、そのようなやり取りを繰り返した後のある日、被害者からの電話があり、前向きな言葉をもらうことができたのです。「ここが勝負だ」私は思いました。時は週末。ここで話し合いができなければ、土日を挟んでしまい、また身柄拘束が長引いてしまうというのも背景にありました。被害者も問題ないとのことから、その場で駅へ向かい、早速、指定された場所へ向かいました。時は午前0時。深夜の示談交渉の始まりでした。
示談と釈放
何度も説得を繰り返し、最終的には何とか理解してもらうことができました。示談はタイミングが命ですから、私は、交渉の際、常に示談書の書式を準備しています。この時も、示談書と告訴の取消書を準備していましたので、その場で署名してもらうことができました。「さすがに疲れたな・・・」タクシーで帰宅すると、時計の針は午前2時を指していました。しかし、このままでは意味がありません。翌日の朝一番、検察庁に合意書と告訴の取消書を提出し、くれぐれも本日中に釈放するよう強く要請しました。検察庁も直ちに対応してくれたため、午後には釈放してもらうことができました。すぐに不起訴処分にもなり、奥様と一緒に、私も深く安心したのを憶えています。
示談はタイミング
被害者としても、加害者を許すというところまでは、なかなか難しいものです。それでも、色々と説得を受け、悩む中で、前向きになれる時が必ずあります。弁護人としては、その瞬間を逸してはいけません。示談はタイミングが命。それを実感した事件でした。
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