被害額4000万円超の電子計算機詐欺事件で執行猶予付判決を得たケースについて

被害会社に4000万円を超える被害額が生じた電子計算機使用詐欺について、弊所弁護人が全額弁償を行うなどの弁護活動を通じ、執行猶予付判決を得ました。

その経験をもとに、被害額が高額な詐欺類型事件の見通しや刑事弁護の方針について、担当弁護士原田大士が解説します。

 

1 事案の概要

依頼者のXさんは、自分のした行為が罪に当たることを認め、反省をしたうえで弊所に相談に来ました。

この事件の犯罪スキームは特殊なもので、個別具体的な側面が強いため、詳細は一切割愛しますが、解説のうえで重要な事案の特徴をあげると以下のような点がありました。
・被害を受けたのは、個人ではなくサービスを提供する法人
・その法人が提供するサービスを不正に受けるという電子計算機使用詐欺事件
・Xさんは、サービスを受けるために、ネット上で、不実の情報を入力することで経済的利益をうけていた
・法人に生じた損害額は、事件発覚時、4000万円を超えていた

 

2 事件の見通し

Xさんは、在宅捜査を受けた時点、つまり逮捕されていない状況で弊所に相談に来ました。

ただ、上記のような相当の被害額が生じている事件では、たとえご本人が事件を認めていても、タイミングはどうであれ逮捕される可能性が高いです。

また、仮に上記の事件で、何の弁護活動を行わず、また被害弁償も行わなければ、まず間違いなく実刑判決が下り、4、5年は少なくとも刑務所に入る可能性があります。

そして、起訴前に仮に全額弁償などが実現したとしても、事案の重大さから、正式裁判を避けるのは困難な事例でした。

 

そこで当職は、上記の見通しをXさんに伝えたうえ、たとえ事件が起訴されることになっても、Xさんがかねてから希望していた被害弁償に向け弁護活動を行い、執行猶予付判決を目指すという弁護方針を立てました。

 

3 弁護のハードル

とはいえ、本件のような事案で執行猶予を獲得するためには、相当な困難があります。
会社を被害者とした高額詐欺事件関する弁護のハードルには、以下のような点が考えられます。

①被害額が千万円単位の詐欺事件は、そもそも、全額弁償が実現しなければ、たとえ初犯であったとしてもまず実刑判決となります。少し不足しているならともかく、一部弁済や分割払いなどを履行しても、結審までに相当額の被害額が残っている判例では、ほぼ例外なく実刑判決になっています。また、ただ弁償の為にお金を揃えれば良いというわけでは無く、犯罪で被疑者が得た不正の利益を吐き出すという視点で弁償金を用意することも重要です。

②全額弁償を仮に実施しても、基本的に示談に応じてくれない会社がほとんどです。すなわち、会社には立場や再犯防止に努めなければならない動機があるため、弁償を行ったからと言って、事件を許してくれたり、そういった意思を表明してくれたりする可能性は低いです。

被害弁償を受け取って頂けるよう、被害会社にお願いしていくとしても、上記のような弁護上のハードルがあります。

それに加えて、被害額が相当高額な事件については、仮に全額弁償が出来ても、執行猶予付判決が得られるとは限らないため、他の側面でもしっかり情状が良くなるよう、細心の注意で弁護にあたる必要があります。

 

4 高額詐欺事件の刑事弁護活動

まず、依頼者が逮捕されれば、逮捕時の捜査状況や弁償状況次第というところもありますが、基本的にはまず十中八九勾留請求が認められ、延長請求も認められるでしょう。
また、起訴された後には保釈をいつ行うかも問題になりますが、被害弁償が実現したり、第1回公判期日で証拠が全て調べられた後であったりといった事情が無ければ、なかなか釈放は認められないでしょう。
それでも、弁護人は、依頼者が望めば、少しでも残ったチャンスをつかむため、勾留阻止の活動や起訴後の保釈請求を検討します。

そして、弁護人は、被害会社に、できる限りの弁償をさせて頂きたい点をしっかり伝え、被害額を被害会社と確認したうえ、被害弁償を受け取って頂けるための努力を尽くします。
事件に関し、被害会社は全ての事情を捜査機関に聞かされているわけでないため、事件の実態、背景、被疑者の人物像にご不明点があれば、弁護人から説明をする必要も出てきます。

 

5 本件の弁護結果とまとめ

本件では、被害会社に大変ありがたいご判断を頂き、起訴状記載の被害額全額の被害弁償を、受け取っていただくことになりました。
そして、Xさんのご家族にもご出廷をしてもらい、しっかりと今後の監督を誓約してもらいました。
このような弁護活動が実を結び、きわどい判決ではありましたが、執行猶予付の判決を得ることができました。
今回は、被害会社が弁償金を受け取ってくださいましたが、提案やお願いの内容や仕方次第では、受け取って頂けない可能性もあったと思います。
被疑者だけでなく、被害者に対しても都度しっかりと説明責任を果たすとともに、会社内で、しっかりと申入れを判断して頂けるような状態で提案することを意識すべきことを再認識した事件でした。

 

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