メンズエステ店でおさわりした客の恐喝事件。もし触って脅されてしまったら?
1 報道の概要
メンズエステ店で、客がセラピストの体を触ったところ、容疑者らが押しかけてきて、「触ったらダメですよ。規約に禁止って書いてあるよね。お客さんも警察に捕まるよ」などと脅し、今年5~8月に20~40代の客4人からそれぞれ現金2万~101万円、計117万3千円を脅し取った疑いで逮捕される事件が発生しました。
このメンズエステ店は、客が紙パンツ1枚をはいただけの格好になり、水着姿の女性従業員に密着されながらサービスするもので、客は事前に「セラピストへのタッチ禁止」「違反行為は100万円請求」といった内容の誓約書にサインしていたということです。
このコラムでは、①メンズエステ店でおさわりする行為が犯罪に該当するか、②店側から金銭を要求された場合にどう対応するのがよいかについて弁護士が解説します。
2 メンズエステ店のおさわりの犯罪該当性
(ア) 触った場所・状況によって異なる?
まず、胸や陰部を触ったような場合は、強制わいせつ罪に該当する可能性があります。尻や足、腰を触るような場合は、暴行罪や迷惑行為防止条例違反に該当する可能性があります。
しかしながら、もちろん相手方の同意があれば犯罪ではありません。メンズエステ店でのお触りの場合、同意が得られている状況だったのか(たとえばセラピスト側から誘っているか)が重要な争点になります。
また、1回足を触る程度の軽微なものであれば、罰するだけの違法性がないとして不起訴になる可能性も十分にあります。
(イ) 店の実態によっては誓約書を出したとしても違法性がない?
「メンズエステ店」といっても、エステ行為しか行わないところから闇風俗まで様々な種類があります。
「タッチ禁止」などの誓約書を提出していたとしても、運営実態が闇風俗で、その誓約書が、単に店側の闇風俗摘発防止のための書面にすぎないような場合は、実質的にはその行為について同意があるとされることもあるでしょう。
3 店側から金銭を要求された場合の対応
(ア) 触ったのが事実であったとしても脅して金銭要求するのは恐喝罪
たとえば誓約書などで、違反の場合に100万円を支払うことが書かれていたとして、それを要求されるだけでは恐喝罪に該当しません。
しかしながら、「払わなかったらどうなるかわかっているのか」や、この報道の事件のようなことを言えば、脅して金銭を要求していることになるため、恐喝罪が成立します。これは、実際に触っていたとしても変わりません。
ここまで脅された場合は、速やかに警察に連絡し、間に入ってもらうようにしましょう。
(イ) 家族にばれないようにしたい場合
もちろん、このようなことが家族にばれたくないと思い、それで要求に応じてしまうこともあるでしょう。また、警察に通報した場合、触った側も暴行罪で捜査対象となり、ご家族が身元引受人として呼ばれてしまうことも考えられてしまい、躊躇することがあるでしょう。
たとえば要求されている金額が数万円から30万円程度であれば、暴行罪の示談金としてあり得るところでしょうから、これ以上の請求がないことを約束する示談書を締結して支払うということは考えられるでしょう。
しかしながら、それ以上の金額を支払うことはやりすぎです。また、それで終わりではなく、その後も不当要求される可能性も残されています。
この場合は、ご家族への発覚を覚悟してでも警察に相談するか、「持ち帰って検討させてほしい」と伝え、速やかに弁護士に相談するようにしましょう。