13歳に乱暴したとして22歳男が逮捕されたとの報道!?
「思い出せない」という言い分は有効?
1 報道の概要
報道によると、容疑者は8月27日、名古屋市内の神社で、面識のない13歳の少年に対し、肩を押さえつけて暴行を加え、乱暴した疑いが持たれ、強制性交等罪で逮捕されたそうです。
事件発覚の経緯は、少年の親族が警察に相談したことで事件が発覚し、防犯カメラなどの捜査で容疑者が特定されましたが、調べに対し「思い出せない。弁護士に相談します」と容疑を否認しています。
容疑者が住む中川区内では今年7月以降、強制わいせつ事件や不審な男に声をかけられる事案が数件起きていて、警察は関連を調べているとのことです。
今回は、よくある「思い出せない」という言い分が有効かどうかを、弁護士が解説します。
2 「思い出せない」という言い分は、逮捕の可能性を高める?
「思い出せない」という言い分は、逮捕の可能性を高めます。
逮捕は、①証拠を隠す可能性、②逃亡の可能性などを考慮して判断されるのですが、「思い出せない」という言い分は、自らの罪を認めず、自分に不利な証拠を消す意思があるとみなされ、逮捕される可能性を高める事情になります。
3 「思い出せない」という言い分は、刑罰を重くする事情になる?
また、「思い出せない」という言い分は、自分の犯罪を認めて反省していないという理由で、悪い情状になります。
そのため、刑罰を重くする事情になるといえます。
4 余罪が立件されることで、刑罰はどのくらい重くなるか?
ただ、「思い出せない」という言い分は、「一般情状」と呼ばれるもので、実は刑罰の重さを多少しか左右しません。
一方で、自白したことによって、新たに余罪が発覚されたり、これまで被害届が出ていた別件と犯人が結び付けられたりして立件されることがあります。別件の存在は、「犯情」という刑罰を決定的に重くする事情になります。
とくに、強制性交等のうち、口淫や手淫の事例だと、1件でも実刑の可能性があるのに、2件以上となると、ほぼ間違いなく実刑になります。そのため、余罪の有無は決定的に重要な事情になるといえるでしょう。
5 「思い出せない」という言い分によって、示談がしにくくなることがある
しかしながら、強制性交等の事件で、実務的に無視できない事情として「示談できるかどうか」というところがあります。
強制性交等は、親告罪(被害者の告訴状がなければ起訴できない)ではなくなったのですが、事実上、起訴されるまでに示談がまとまれば、不起訴となることがほとんどです。
弁護士としても、示談をすることを第一順位で目指します。
示談する際、容疑者が「思い出せない」と言っているということが伝わると、反省していないと思われ、被害者側と示談できないという事例がよくあります。
そのため、示談する可能性があるときは、容易に「思い出せない」という言い分を出さない方がいいこともあります。
6 まとめ
現在の刑罰の重さを決める事情を考えると、示談できない状況であれば、覚えていても「思い出せない」という言い分をする合理性はあります。
しかしながら、思い出せないという言い分は、被害者を刺激し、示談をしにくくなる事情になります。
ここは、相談した弁護士と協議して決めていくほかないのですが、「弁護士が来るまで黙秘します」と言ってもらったほうが、今後の示談の可能性も考えると良かったのではないかと思います。
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