「ホテルに入ったがわいせつな行為はしていない」との否認は有効か? 弁護士が解説します
1 報道の概要
埼玉県警朝霞署は2021年8月24日に、2021年2月9日夜に、県内のホテルで、県内の女子生徒が18歳未満と知りながら、現金数万円を渡す約束でわいせつな行為をしたという児童買春・児童ポルノ禁止法違反の容疑で、会社員の男(26)を逮捕しました。
報道によると、男と女子生徒は2月上旬、会員制交流サイト(SNS)を通じて知り合い、当日初めて会っていたとのことです。男は「女の子とホテルに行ってお金を渡したが、わいせつな行為はしていない」と容疑を否認しているとのことです。
弁護士が、「ホテルに入ったがわいせつな行為はしていない」と否認することが有効か解説します。
2 そもそも情況証拠しかない場合に、どのように立証するか
通常の事件でも、実際にわいせつな行為に及んでいることの直接的な物的証拠はないことが多いです。いわゆる「ハメ撮り」など、わいせつな行為に及んでいることが撮影されている場合は別として、情況証拠しかないような場合に、検察官はわいせつな行為を行っていることをどのように立証しているのでしょうか。
刑事事件での立証は、直接的な証拠ばかりではなく、情況証拠によって行うことも可能で、実務でも、ほとんど情況証拠によって証明がされています。そもそも、刑事事件の証明は、一点の曇りもない証明が要求されているわけではなく「合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の証明」で足ります。
どういう場合が「合理的な疑いを差し挟む余地のない」といえるかについては、情況証拠によって認められる間接事実の中に、(立証しようとする事実関係)でないとしたならば合理的に説明することができない、あるいは少なくとも説明が極めて困難である事実関係が含まれていればよいといわれています。
3 従前のメッセージのやりとりや、ホテルに入ったということがあれば、基本的にはわいせつな行為をした立証ができる
実務的には、わいせつな行為をしたことの立証は、
①ラブホテルに入ったこと
(ラブホテルに入りながら性的な行為をしないというのは説明が困難)
②メッセージでわいせつな行為をすることを前提にしたやりとりをしている
(そのようなやりとりをしながら性的な行為をしないというのは説明が極めて困難)
の情況証拠によって行われることが多いです。
これらの証拠があれば、基本的にはわいせつな行為をしたことが立証できるといえます。
しかしながら、これにも例外があります。
たとえば、ホテルに入ってすぐにトラブルになったような事例です。ホテルにいる時間が5~10分と短かったり、ホテルに入ってすぐに大声でトラブルになっていることをホテルスタッフが聞いていたりする場合は、わいせつな行為をせずホテルから出てくることもあるだろうという説明ができますので、立証を崩すことが可能です。この場合、「ホテルに入ったが、わいせつな行為はしていない」というのは、十分通る反論だといえるでしょう。
4 まとめ
報道されている件も、どのような経緯だったのかが明らかではないため、「ホテルに入ったが、わいせつな行為はしていない」という言い分が通るような事案か不明です。
このような言い分が有効な場合もありますし、無理筋な場合もあります。
弁護士と相談し、どういう方針でいくかを決めてもらうのがよいでしょう。
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