女子更衣室での盗撮事件について

目次

1.事件の概要と問題点

2.盗撮の罪とは?

3.住居侵入罪や軽犯罪法違反

4.会社の更衣室での盗撮

5.防犯目的のカメラ設置

6.まとめ

 

1.事件の概要と問題点

 ここのところ、飲食店の更衣室などでの盗撮事件がニュースとなっています。鳥貴族で、店長が女性従業員の更衣室に、盗撮カメラを設置して下着姿を盗撮したという事件や、串カツ田中のフランチャイズ店で、従業員に知らせずに更衣室にカメラを設置していたことが判明したという事件が起こっています。
鳥貴族の事件の場合、盗撮となることは間違いないでしょう。しかし、電車内で、自分のスマホで盗撮する場合と、カメラを設置する場合で、何か違いがあるのでしょうか?

 さらに、串カツ田中の場合のような、防犯目的での設置(もちろんこれが本当のことかは、厳しく調べられる必要がありますが)の場合には、そもそも盗撮行為と言えるのでしょうか?
現在多くの盗撮事件が問題とされている中で、更衣室やトイレなどで、カメラを設置して行われる盗撮について解説します。

 

2.盗撮の罪とは?

 盗撮事件は、各都道府県の迷惑行為防止条例により規制され、罰則も定められています。この条例は少し分かり難い規定になっています。何故かというと、盗撮事件の被害者は、迷惑行為防止条例によると、盗撮された被害者本人ではなく、そのような盗撮行為を見せられたことにより、不安を感じた一般公衆(周りにいた人たちですね)という規定の仕方になっているからです。こんな風に、常識的にはおかしな規定となっているのは、国の法律と、地方の条例の関係といった、法律家たちだけが気にする複雑な理由があるためです。盗撮の被害者が、盗撮された本人ではなくて、その周りにいて不安を感じた他の人達だなんて、普通の人には思いもつかないことかもしれませんね。

 しかし、そうなりますと、周りに全く人がいないところで行われたような盗撮事件は、何の法律(条令)で処罰するのかという問題が生じます。たとえば、自宅に来た人を盗撮する場合には、周りに人がいませんから、迷惑行為防止条例ということは難しいように思えてきます。このことは、自宅のトイレにカメラを設置し、来客を盗撮する場合にもいえることです。

 

3.住居侵入罪や軽犯罪法違反

 そこで、盗撮の処罰のために、住居侵入罪なども用いられます。他人の家の敷地に入り、家の中の夫婦の行為を盗撮や録音していたような事件があります。こういう場合は、周りに人がいませんので、迷惑行為防止条例は適用できません。しかし、敷地内に入っていますので、住居侵入罪ということで処罰の対象になります。

 なお、軽犯罪法という法律があって、人が服を脱いでくつろいでいるようなところをのぞき見する(これには盗撮しながらのぞき見する場合も当然含まれます)も処罰の対象となります。しかし、この法律の罰則は非常に軽いのです。最高で9999円(1万円未満)なんですね。

 そうしますと、周りに人がいないようなところでの盗撮で、しかも住居侵入とは言えないような場合には、どのように処罰すべきなのかという問題は残ることになります。

 

4.会社の更衣室での盗撮

 女子更衣室であっても、基本的にお店の店長や従業員は、掃除その他の理由で入ること自体は認められています。そうなると、更衣室にカメラを設置する行為を、住居侵入とするのはやはり難しいようです。

 また、更衣室の場合、特定(その店の)従業員のみが使用します。盗撮される人も、その周りにいる人も、全て同じ会社の従業員です。そうなりますと、被害者である一般人が居るのか、微妙になってくる場合も出てきます。特に、従業員が一人しかいない場合にはどうなるのかなど、疑問は生じます。

 このように、女子更衣室の盗撮は、法律ではまだ十分に罰則が整備されているとは言えない状況です。ただ、このような盗撮が発覚した場合の企業のイメージダウンは深刻なものがあります。そこで、刑事処罰とは別に、このような行為は会社により厳しく処分されます。鳥貴族の店長による盗撮事件の場合、会社は店長を懲戒免職にしています。

 

5.防犯目的のカメラ設置

 それでは、串カツ田中のような、防犯目的での更衣室へのカメラ設置はどのように考えるべきでしょうか?

 更衣室でおカネやモノがなくなったという話はよくあることです。そういう事件の場合、密室での出来事ですから、なかなか犯人を見つけることは難しいようです。そこで、カメラを設置して、防犯に努めようという意図自体は分かります。

 法的にはなかなか難しいところですが、このような行為が罰則の対象外とされる可能性はあるように思えます。たとえば、録画はするが、誰もアクセスできない状況になっており、盗難の被害届が出されたときにのみ確認するといった形なら、犯罪とするのは難しいように思えます。(そもそも、すでに説明した通り、更衣室の盗撮に刑罰を科すこと自体がかなり難しいということもあります。)

 しかしいずれにしても、このような「防犯カメラ」は、悪用される可能性も非常に強いものです。従業員の同意なく導入した場合、世間の強い非難を浴びて、店のイメージダウンにつながることは間違いないでしょう。そこで串カツ田中も、こういう防犯カメラを設置したフランチャイズ店との契約を解除しました。

 

6.まとめ

 盗撮事件は、日々ニュース報道されています。ただ、盗撮がどのような法律で処罰されているのか理解している人は少数派だと思われます。有名飲食店で起こった更衣室での盗撮事件をもとに、盗撮事件と、それを処罰する法律の在り方について、考えて貰えれば幸いです。

(文責:大山 滋郎 令和元年7月12日)

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