被害者不明で示談ができなかったものの、贖罪寄付により不起訴になった盗撮事件
罪名:迷惑行為防止条例違反(盗撮)
最終処分:不起訴
依頼者:本人
解決までの期間:3か月
1.事件発覚からご依頼まで
依頼者は、駅の階段で、スマートフォンを使って盗撮していたところを、私服警官に見つかりました。
「盗撮していましたね、署まで来てもらえますか。」そんな問答をしているうちに、被害者はその場を離れてしまいました。
通常は、被害者に声をかけて、その場に留めつつ、被疑者を確保する形で進めます。駅などの雑踏ですと、みな急いでいますから、少しでもタイミングが遅れると、その場で関係者は立ち去ってしまいます。警察としても、手痛い失態といえます。ただ、盗撮しているところを警官が見ていますし、データも残っていましたので、盗撮の証拠は充分揃っており、刑事事件化しました。
依頼者としても、被害者がいない中で、対応に悩み、相談に至りました。
2.弁護活動の流れ
被害者が不明である以上、当然、示談はできません。担当検察官としては、示談ができていない以上、処罰せざるを得ないとのことでした。被害者が不明の場合、被害者の意向が分かりませんので、それを、「許していない」と取るか、「処罰を求めるか分からない」と取るか、事件や担当検察官によって異なるのが実情です。本件では、前者の考え方をする検察官でした。
そこで、この事件では、本人に有利な事情を積み重ねることにしました。
本人には、たとえ受け取ってもらえないにせよ、反省の気持ちを表すために、謝罪文を書いてもらいました。また、性犯罪を繰り返す人の治療を専門的に行っているクリニックを受診してもらい、性嗜好障害(またはそのおそれ)について、カウンセリングを受けました。
その他、盗撮に使われやすいスマートフォンを解約し、カメラ機能の無い携帯電話を使ってもらう、家族に監督文を書いてもらい、本人の監督、行動の制限などを誓約してもらうなど、再犯防止につながることは全て行いました。
その上で、一般的な示談金と同程度の金額を、慈善団体に寄付してもらいました。(このような寄付を贖罪寄付と言います。)
最終的に、これらの資料を全てまとめ、これまで事務所で取り扱った同種事案も説明した意見書を作成し、検察官と交渉したところ、不起訴としてもらうことが出来ました。
3.弁護士からのコメント
被害者がいる事件では、一般的には示談交渉が極めて重要であり、ほぼ示談一本勝負といっても過言ではありません。
しかし、事件の中には、被害者がいるが特定できてない、被害者が示談のやり取りを拒否しているといったケースも当然存在します。
そうした厳しい事案でも、できることは多数あります。弁護人としては、諦めず最後まで弁護活動を行う姿勢が重要でしょう。