盗撮事件において、被害者様の処罰感情が非常に強く、罰金刑となった事案
罪名:盗撮(迷惑防止条例違反)
最終処分:罰金刑
1 事件発覚からご依頼まで
本件は、商業施設のスタッフをしている依頼者が、建物内の女子トイレに侵入して女性をスマートフォンのカメラで撮影したという、盗撮の事件です。
盗撮に加えて建造物侵入が成立するため、示談などの処分を軽くするための特別の事情がない限り、間違いなく起訴されるという事案でした。
2 弁護活動の流れ
盗撮事件における弁護活動のセオリーとして、まずは被害者様との示談成立に向けて、示談交渉に臨むことになります。
ただ、本件は本人と被害者様がともに学生であるところ、両人は顔見知りとのことでした。事件関係者が顔見知りの場合、被害者様の被害感情が強くなることが多いため、示談交渉の難航が予想されます。
その予想に違わず、本件でも検察官が被害者様に弁護士からの連絡の可否を確認したところ、被害者様は弁護士とも一切話をしたくないということで、連絡を差し上げること自体を拒絶されてしまいました。
その後も検察官を介して、せめて話だけでもさせていただけないか、それも難しければ謝罪金の受取りだけでもお願いできないかといったことを提案しましたが、最後まで被害者様のお気持ちは変わらず、終に全くお話することも叶わず示談不成立となりました。
そこで、今度は検察官に対して、事件直後から性依存症の治療のためにクリニックに通っていることや、被害者様に配慮して職場を退職の上、会ってしまわないように行動範囲を変えていること、少しでも反省の気持ちを形にするという意味で贖罪寄付(慈善団体等への寄付)を行う予定であることなどを伝え、何とか不起訴処分とできないか、交渉を行いました。
検察官も、本人が反省していることや、再犯防止のために一所懸命に努力していること、まだ若く今後があることには理解を示してくれました。しかし、被害者様が「絶対に処罰してほしい」と処罰を求める意思を明確にしているとのことで、そのような処罰感情がある以上は検察官としても不起訴とすることはできず、最終的には略式起訴となり、罰金刑となりました。
ただし、本人の罪を認めこれを償おうとする真摯な姿勢や、弁護士からの様々な申入の結果、建造物侵入については起訴されずに盗撮のみの起訴となり、罰金額も一般的な事案よりも低額にしてもらうことができました。
3 弁護士からのコメント
盗撮事件では直接的な金銭被害は生じない分、「盗撮された」ということに対する被害者様のお気持ちが最終的な処分を分ける大きな要素となります。
その点、顔見知りによる盗撮の場合には、被害者様としては許せないお気持ちが強くなることが多いです。
一般的には示談が成立しない場合でも、本件のような事情をしっかりと伝えることで不起訴処分となることもあり得ます。その点、本件では被害者様の処罰感情がとても強く、結果として不起訴処分とすることができなかったのは非常に残念です。
もっとも、最終的に本人の反省が伝わり、罰金額が低額に抑えられたのは、幸いといえるでしょう。
弊所では、示談の難航が予想される事件においても、様々なアプローチを用いて、少しでも良い処分となるよう最善の弁護活動を尽くしてまいります。