週刊東洋経済7月20日号特集「人生100年時代の稼ぐ力」に掲載されました
代表弁護士 大山滋郎の記事が、週刊東洋経済7月20日号特集「人生100年時代の稼ぐ力」に掲載されました。
【特集 人生100年時代の稼ぐ力】PART1 副業編 副業ルーキーのための法律と税金のキホン
(2019年7月20日) 7/20号:人生100年時代の稼ぐ力、32~33ページ
以下、記事の抜粋。
長年会社に勤めていても、労働に関する法律や税金については意外と知らないことが多い。副業を始める前に、これだけは知っておきたい法律と税金のポイントをまとめた。
法律1
会社は理由なく副業を禁止できない
副業は法律や会社の規則で禁止できるのか。2018年に厚生労働省は、就業のルールである就業規則を各企業が定める際の参考となる「モデル就業規則」を変更した。これまであった「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という副業を原則禁止とする規定が削除され、副業を認める規定が新たに追加されたのだ。
しかし、これはあくまで就業規則についてだ。そもそも法律では公務員以外は副業が禁止されていない。前提として、憲法では「職業選択の自由」が認められている。副業の場合でも、本業の勤務時間外ならば仕事をすることは自由だ。そのため、企業が副業を全面的に禁じることは本来できない。
法律2
本業に支障があれば処分の対象になりうる
法律違反ではないのだが、現在ほとんどの企業は就業規則で副業に関する何らかの制限を設けている。本業の業務に支障がある場合と、企業秘密が漏洩したり競合会社で就労したりする場合を禁止する会社が多い。変更されたモデル就業規則でも、会社への事前の届け出が必要とされている。
もし隠れて副業をして会社にばれたら、解雇になる可能性はあるのか。解雇になることは極めて少なく、大抵は始末書を書かされる程度で終わる。解雇して裁判になれば会社が負ける可能性が高いからだ。
解雇の有効性を裁判で争う場合、本業に影響があるかが争点になる。例えば、私立大学の教授が無許可で通訳や語学学校講師などの業務を行い解雇された判例では、副業は夜間や休日に行われており本業への支障はなかったとして解雇は無効になっている。一方、トラック運転手が夜間にタクシー運転手として働いていたケースでは、副業が深夜に及び睡眠時間が削られていたとして解雇が認められた。
本来、就業時間外は自由な時間のはずだが、副業に対してはまだ制限が多い。副業を始めるときは、本業に支障を来すかどうか、見極める必要がある。
法律3
労働時間は副業分も合算し残業代が出る
副業で別の会社に雇われた場合、労働時間や残業代はどうなるのだろうか。労働基準法では、事業主が異なる職場でも労働時間は通算されると規定されている。つまり、本業と副業の合計時間が1日8時間を超えれば、法定時間外労働となり割増賃金(残業代)が発生する。その支払いは、一般的には労働契約を時間的に後から締結した会社が義務を負うことになる。
例えば、会社Aの所定労働時間が8時間、後から雇った会社Bが5時間だった場合、5時間分は残業代が発生する(右図)。この残業代の支払い義務は、会社Bにある。週に40時間を超えてほかの会社が雇う場合も、同様に残業代の支払い義務がある。
こうした労働時間や残業代の規定は、副業に限ったものではない。アルバイトなど非正規雇用の掛け持ちでも同じだ。しかし実際には、複数雇用されていても労働時間が通算されず、残業代も支払われていないという問題が以前からある。副業により雇い主が複数になる場合は、事前に労働時間や残業代について会社側に確認する必要があるだろう。