強制性交罪を「不同意性交罪」に変更へ…「同意なしは処罰対象」を明確化との報道!?
1 報道の概要
法務省は刑法の「強制性交罪」を「不同意性交罪」に罪名変更する方針を固めました。
「強制わいせつ罪」は「不同意わいせつ罪」に改める。性犯罪規定を見直すため、今国会に提出予定の改正法案に盛り込みます。被害者団体の要望を踏まえた対応で、同意のない性行為が処罰対象となることを明確に示す狙いがあります。強制性交罪などの成立要件について、現在の「暴行・脅迫」だけではなく、「虐待」や「経済的・社会的地位の利用」など計8種類の行為や状況を例示。それらによって、同意しない意思の表明などが困難な状態になった被害者に性行為をした場合は処罰するとしています。
以上の報道をもとに、法的に問題となる点を解説します。
2 現行法は暴行強迫が要件
現在の強制性交罪では、基本的に暴行や強迫によって、無理やり性交を行うことが処罰されています。
しかし、明らかに暴力をふるったような場合はともかく、そもそも暴行や強迫があったのかどうか、はっきりとしないケースは非常に多いです。このような場合、被疑者側としては、「相手も同意していると思っていました」との主張を行います。夜道でいきなり性交に及ぶようなときには、このような言い訳は当然通用しないのです。
しかし、強制性交罪などの犯罪は、顔見知りの間で起こることが非常に多いです。そういうときに、明確な暴行強迫行為があったのかといえば、かなり微妙な事案も多かったです。
今回の法改正は、そのような場合にも対応できるようにするものです。
3 今まではセクハラとされていた行為
これまでは、例えば会社の上司が部下の女性にたいして、職場上の地位を利用して関係を持つようなことは、「セクハラ」に該当するとはされていました。従って、民事上の損害賠償責任などは当然に発生しました。
しかし、逆に言えば、違法ではあるが刑法の罪にはならなかったのです。子供に対して虐待などする中での性行為は、現在でも刑事罰の対象となります。しかしこれが、成人女性相手だと、現行法では強制性交罪といえるかはかなり難しいです。
このような場合でも、今回の法改正で、刑事処分の対象となる可能性が出てきたといえます。
4 どこまでが犯罪なのか
現行法のもとでも、強制性交罪の成否が、不明確な場合は相当程度ありました。女性側が男性の宿泊施設に自分の足で入っていったような場合に、後から「強制性交があった」と主張されるような場合は現実にあります。うちの事務所でも何件かこのような事案を扱ったことがあります。
今回の改正法が成立すると、更に犯罪かどうかの境目が不明確になるのも事実です。女性側が、「本当は嫌で嫌でしょうがなかったけれども、断り難かった」といったケースで、どこまでが犯罪とされるのかは、非常に難しい問題です。
5 不同意性交罪、不同意わいせつ罪が事件化している方、当事務所までご相談ください
当事務所では、強姦罪として規定されていたころから、多くの性犯罪系の弁護活動を行ってきています。
「同意」の有無について主張することに加え、相手方との示談、検察官との交渉など、一番良い結果となるように、できる限りの弁護活動を行ってきています。
不同意性交罪、不同意わいせつ罪等の事案で刑事処分を受ける恐れのある方は、是非ご相談いただきたいです。