闇バイトで特殊詐欺の「受け子」をして逮捕!?
刑事弁護人が見てきた闇バイトの実態とは?
1 報道の概要
報道によると、N大学経済学部の容疑者は2021年12月15日、税理士事務所の職員を装って、東京都内の女性(80代)の家を訪れ、現金をだまし取ろうとした現行犯で警視庁に逮捕されたとのことです。
容疑者は「勉強がおろそかになって卒業できなかった。奨学金の返済などで困っていた」と話していて、SNSでいわゆる「闇バイト」に応募し、犯行に及んだということです。
このコラムでは、実際に多数の特殊詐欺の弁護活動を行ってきた弁護士が、いわゆる「闇バイト」の危険性について解説します。
2 闇バイトとは
闇バイトとは、「高収入(だいたい一回5~10万円)と引き換えに、違法な仕事をするアルバイト」のことをいいます。
当たり前ですが、そのような求人は、まっとうな求人サイトに掲載されるはずがなく、多くはTwitterなどのSNSを通じて募集されます。「闇バイト」と明記されていなくても、ハッシュタグで「#即日即金」とか「#高額バイト」とか書かれているものは、大抵は買春がらみか裏バイトだと思っていただいて構わないでしょう。
3 闇バイトの業務内容は?
闇バイトの業務はさまざまです。
具体例としては、以下のようなものがあります。
■ 出会い系サイトのサクラ
■ パチンコ・スロットの打ち子
■ 口座レンタル(名義貸し)
■ 特殊詐欺の出し子(お金を引き出す役)・受け子(被害者からキャッシュカードや現金を受け取る役や、他の協力者間の現金運搬役)
このなかでも、特に多いのが、特殊詐欺の出し子・受け子です。その最大の理由は、被害額の大きさです。
4 特殊詐欺の闇バイトが多い合理的な理由
特殊詐欺は、一回の被害額が100万円を超える事件もあります。しかしながら、他の闇バイトは、せいぜい一回数万円の収益でしょう。
そのため、なんとか収益をあげようとする反社会的勢力が、特殊詐欺をするニーズは高いのだろうと推測されます。
しかしながら、特殊詐欺の最大の問題点は、「実際に被害者に接触する人」「お金を引き出す人」などは、被害者と顔をあわせたり、金融機関やコンビニの監視カメラなどに映る可能性が高いというところです。
反社会的勢力としては、自分たちが捕まったら組長に責任がいくため、なんとか自分たちが関与していないように見せかける必要があります。そのため、闇バイトで、「逮捕されてもいい存在」を見つけてきて、仕事をしてもらっているのです。
現在の特殊詐欺は、出し子や受け子への指示は、「テレグラム」や「シグナル」という、発信者の追跡が困難なメッセージアプリでなされています。実際に捜査機関が指示役まで捜査できることは稀です。結局、10万円程度の報酬に目がくらんで闇バイトで集まった人が全責任を負わされるという事例ばかりです。
5 特殊詐欺の受け子・出し子をしてしまった人の刑罰は?
特殊詐欺の刑罰は、通常の詐欺と比べても格段に重いです。出し子や受け子であり、なおかつ前科前歴がなくても、一発で刑務所行きだと思ってもらったほうがよいでしょう。
刑務所行きを避ける方法は、被害総額をすべて弁償するほかないと思っていただくほうがよいでしょう。前科前歴のない受け子の事件ですが、被害額1400万円の事例で、1000万円以上弁償したにもかかわらず刑務所行きになったものがあります。それほど、刑罰は重いのです。
もし、あなたやその家族が闇バイトに手を出してしまっているなら、早めにやめた上で、弁護士に相談をしてもらうべきです。やめるなら、早めにやめたほうが傷も浅いでしょう。