露天風呂の組織的な集団盗撮事件を刑事事件の専門家が解説します

1 報道の概要

露天風呂に入浴中の女性を狙った組織的な盗撮事件で、兵庫県迷惑防止条例違反などの罪に問われているアルバイト従業員の男(33)の公判が開かれ、検察側が懲役3年を求刑したとの報道がありました。

論告で検察側は、起訴された分だけでも計16件の盗撮をしていたと強調したうえで、「被害者のプライバシーや尊厳を著しく踏みにじる計画的、組織的な悪質性の極めて高い犯行」と指摘。

知人女性を露天風呂に誘って盗撮する行為にも関わったことなどから「不可欠な役割を果たした」としたそうです。

今回は、この事件を題材に、大型盗撮事件の弁護活動について解説します。

 

2 入浴者を狙った組織的盗撮事件の被疑者が続々逮捕

去年の12月ころから、組織的に露天風呂を狙って盗撮していた被疑者たちが逮捕されて、問題になっています。

被疑者たちは、インターネット上などで「盗撮のカリスマ」として知られる人物をリーダー格として、組織的に盗撮を続けた疑いで逮捕されており、捜査・起訴されているものだけでも1府5県の事件があると言われています。

被疑者たちは、被害者を露天風呂の入浴まで誘引する役や、撮影役等役割分担をして組織的に犯行を行っていた疑いがあり、時には露天風呂から約200メートル離れた山から望遠レンズで撮影をしていたこともあったそうです。

今回の報道からすると、男性は、その事件に関与した一人として、盗撮行為自体をするとともに、知人女性を誘うことにも直接関与した可能性が高いといえます。

 

3 起訴相当数にも上る盗撮事件の処分はどうなるか

盗撮事件は、初犯であって、2、3件の被害であれば、一般的には罰金刑で済むような可能性もある犯罪です。しかし本件では、3年の懲役刑を検事から求められています。

盗撮事件の中では、比較的重い求刑意見と言えますが、どうしてこのような厳しい求刑がされてしまったのでしょうか。

一般的に、被害者の件数が多いほど、組織性や計画性が高いほど、犯罪の中で重要な役割を果たすほど、情状面が不利になり、求刑意見も重くなります。今回の報道によれば、検察官はまさにこうした不利な情状面を指摘したうえで、3年の懲役刑を求刑しており、事件を重大に考えている様子が伺えます。

なお、兵庫県迷惑行為防止条例が定める盗撮の法定刑は、常習性のある盗撮でも懲役1年を上限としていますから、単純にこの法律だけでは、1年以内の有機懲役しか求刑出来ません。そこで本件では、以下のような事情がある可能性があります。(あくまで可能性です)
・兵庫県迷惑行為防止条例以外の法定刑の重い罪も起訴されており、併合罪となることで、重い刑期の1.5倍の範囲から、3年の懲役刑が選択された(刑法51条2項)。
・今回の事件が再犯の事例であり、盗撮事件の併合罪と累犯の刑加重が同時に行われ、その加重刑の範囲から、3年の懲役刑が選択された(刑法72条、57条、51条2項)。

実際にどれくらいの刑とするかは、今後裁判所が判決を出して決めます。弁護人がどれくらいの弁護ができたかで刑も変わってきますが、本件は、執行猶予が付かず実刑になってしまう可能性も十分ある事件と言えるでしょう。

 

4 弁護人にできること

こういった大規模な盗撮事件を受けた弁護人としては、少しでも男性の情状面を良くして執行猶予付き判決を得るために、被害弁償や保釈活動に専念することになるでしょう

本件でも、弁護人側は、本人が反省し、保釈後は実家で働き始めた等の理由から、執行猶予付きの判決を求めているそうです。保釈をした後に、家族の監督下にしっかりと生活することを示すことは、ひとつのアピールポイントになるでしょう。

また、被害弁償は最重要の弁護活動の一つです。今回は16件で起訴されているため、全ての被害者に謝罪金を受け取ってもらうのは至難と言えます。一人に充てる予算も限られて来るかと思います。

それでも、弁護人は、場合によっては共犯者側とコンタクトをとるなどして、一緒に被害弁償を目指していくでしょう。

他にも情状弁護には様々なアプローチがあるため、弁護士に依頼して、その弁護士と協議して進めていくことになります。

 

5 まずは弁護士までご相談を

関連事件のニュースを見ますと、リーダー格の逮捕をきっかけに、盗撮に関与したとされる方が続々と逮捕されているといった趣旨の報道を目にします。

グループでしていた盗撮行為は、一人が捕まれば、他の方が逮捕される可能性は特に高いと言えます。メッセージ履歴やシェアしていた動画などから、誰が関与しているかを調べることが可能だからです。

ご家族が逮捕されて困っている方や、ご自身が逮捕されるか不安な方は、全国対応の弊所弁護士まで、まずはご相談下さい。

 

執筆者・原田 大士の写真

執筆者情報

原田 大士Daishi Harada

弁護士法人 横浜パートナー法律事務所 弁護士