誤送金された720万円返金に応じず、20万円使用した男が窃盗で逮捕との報道!?
1 報道の概要
自社の口座に誤って振り込まれた現金の一部を引き出したとして、会社社長の男(60)が窃盗の疑いで逮捕されました。
この男の会社は、「いすゞ」というリサイクル機器販売会社を経営しており、過去に取引のあった県外のリサイクル業者が、同名の自動車メーカーに支払う代金を誤って振り込んでいました。返金の要請に応じず、業者は被害届を出していました。
発表によると、男は誤って振り込まれた720万円のうち20万円を引き出して使用していました。
以上の事案をもとに、法的に問題となる点を解説いたします。
2 「いすゞ」なんて会社名を付けられるの?
そもそも本件では、有名な自動車メーカーと同じ名前が、問題の会社に付けられていることから、誤振込が発生しています。このような有名企業の名前を自社名として良いのかが問題となります。
ただ、「ホンダ」や「いすゞ」などは一般的に使用されている名称でもある、これを、他の会社は一切使用できないとなると、それはそれで問題が大きい。そこで、会社名については、特に業態など違う場合には、有名企業と同じ名前の会社はそれなりに認められています。
3 何で窃盗になるの?
本件は、「いすゞ」という会社名で、相手をだましたのだから、「詐欺」にならないかも気になるところです。
しかし、さすがに有名企業の会社名を使用していただけでは、そこからの誤振込が生じる因果関係を認めるのは苦しいです。自分のお金ではないのに、銀行をだまして20万円をとったのだから、詐欺罪になるようにも思えます。
ただ、ATMからお金をおろした場合、「人をだました」というのは困難であり、やはり詐欺とは考え難いです。
そこで、ATMの操作を通じて、お金を盗ったと考えて、窃盗罪となったと思われます。
4 本件の弁護活動
本件では、形式上の被害者である銀行と、実質的な被害者であり誤振込をした会社があります。
この場合は、実質的な被害者の方にお詫びをして、損害賠償示談まですることが大切となってきます。
返金に加えて十分な賠償まですれば、本件は不起訴となる可能性も十分にある事案と考えられます。
5 窃盗事件を起こした方は、すぐにご相談ください
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執筆者情報
大山 滋郎Jiro Oyama
弁護士法人 横浜パートナー法律事務所 代表弁護士