スマートフォンを地面において下着を盗撮しようとした男が逮捕されたとの報道!?

1 報道の概要

スマートフォンを地面に置いて通りかかった女子高生の下着を盗撮しようとしたとして、会社員の男性(32歳)が逮捕されたとの報道がありました。

今年5月ころ、動画モードにしたスマートフォンが路上に設置されているのを女子高生が見つけ、これを学校に相談したことで事件が発覚、防犯カメラから男性が浮上したとのことです。男性は、「5月の件は記憶にございません」としているそうです。

また、警察が押収したスマートフォンの中から、6月ころ、電車内で別の女子高生の太ももを盗撮した動画が発見されたとのことです。

今回は、この事件を題材に、盗撮の刑事弁護を解説します。

 

2 スマートフォンを設置するだけで盗撮の犯罪になるの?

男性は、動画モードにしたスマートフォンを路上に設置した疑いが持たれています。報道では、発見した女子高生が動画に映ってしまったかまでは明らかではありません。

スマートフォンの上を女子高生が通らなければ、下着は動画に映らないはずですが、それでも犯罪は成立するのでしょうか。

各県の定める迷惑行為防止条例のほとんどが、いわゆる撮影行為だけでなく、下着を見る目的でカメラを設置する行為も犯罪として取り締まっています。

今回の男性がもし下着を盗撮する目的でスマートフォンを設置したのであれば、そのこと自体が迷惑行為防止条例違反になり得るため、報道のような説明になるのです。

 

3 否認事件と被害者のいない事件の難しさ

男性は、「5月の件は記憶にございません」としており、容疑を否認しているようです。

盗撮事件で逮捕までされてしまっているものについては、たとえ黙秘や否定を続けても、起訴されれば有罪の判決になってしまうケースが多いです。今回の報道でも、防犯カメラ映像から男性の犯行が疑われており、なんらかの客観的証拠が存在する可能性が高く、無罪を主張するのはハードルが高いものと予想されます。

もし私が弁護人になれば、そのことをしっかりお伝えしたうえで、否認をすべき事件であるか、依頼者の方と慎重に考えます。事件のことを素直に認めれば、被害者に謝罪をし、謝罪金をお支払いするという示談の道が切り開かれます。盗撮事件では、誠意を尽くし、事件のことを被害者に許して貰えれば、不起訴となって前科が付かないことも多いです。

ただ、報道のケースの場合、こうした示談交渉が難しい可能性もあります。というのも、スマホを発見した女子高生がもし動画に撮られてしまっていれば、まぎれもなく盗撮の被害者ということになり、男性は、謝罪を尽くす余地が出てきます。しかし、女子高生がただ路上の遠くからカメラの存在に気づいただけであれば、示談をする被害者とまでは言えないでしょう。つまり、示談をする被害者がいない可能性があり、情状で不起訴を目指すことが難しいと言えるのです。
  

4 余罪となる電車での盗撮はどうなるのか

押収された男性のスマートフォンからは、別の電車での盗撮動画が発見されたとのことです。当然、起訴される盗撮事件の数が多いほど、刑は重たくなります。よく盗撮事件の弁護をしていますと、警察に渡した携帯電話に、余罪に関する大量のデータを入れてしまっている方も多くいらっしゃいます。

それでは、見つかったデータが多いほど、刑は重くなるのでしょうか。

そこまで話は単純でないというのが答えです。余罪に関する動画は、被害者が誰であるかを特定するのがなかなか難しく、警察もなかなか全てを立件することが出来ないのが実情です(もっとも、盗撮自体はれっきとした犯罪です)。

男性のケースでも、写っている女子高生の姿が太ももだけだったとあると、被害者特定作業は難航する可能性が高いです。

 

5 ご家族が逮捕されてしまった方や、自分の事件で取調べを受けている方はご相談下さい

今回の事件のように、被害者を特定するのが状況から考えて難しい事件については、弁護活動も特殊な形になってくるでしょう。それでも、刑事事件の専門家に依頼をし、捜査の都度にベストな方策を考えていくことは、有用なことでしょう。

ご家族が逮捕された方や在宅捜査で取調べを受けられている方は、抱え込まずに弊所にご相談下さい。

 

執筆者・原田 大士の写真

執筆者情報

原田 大士Daishi Harada

弁護士法人 横浜パートナー法律事務所 弁護士