被害から5年後の市への通報で、都市局職員の男が懲戒処分になったとの報道!?

1 報道の概要

5年前の2016年に、自宅のトイレにカメラを設置して女性を盗撮したとして、千葉市は22日、30代の男性職員に懲戒処分を行った。

市によると、男性職員は2016年、自宅で開催した飲み会の際、トイレに設置した2つのカメラで知人女性1人を盗撮したという。トイレを利用して違和感を覚えた女性が男性職員に確認したところ、盗撮を認め、謝罪した。

女性は当時、警察に対し被害を届け出ていなかったが、「ほかに被害者が出るかもしれない」と考えるようになり、被害に遭ってから約5年後の2021年になって市に通報し、男性職員の盗撮が発覚した。

 

2 犯行から時間が経っている事件の扱い

本件は犯行から5年が経過している事件です。このように犯行から時間が経っている事件は、刑事事件としてはどのように扱われるのでしょうか。

刑事事件には、公訴時効という制度があります。犯行時から一定の時間が経過した罪に関しては、公訴を提起(=起訴)できなくなるというものです。

公訴時効の期間は罪ごとに定められていますが、例えば本件のような盗撮(迷惑行為防止条例違反)であれば、3年間とされています。

ですので、本件は犯行から5年が経過していて既に公訴時効が完成しているため、起訴されることはありません。

 

3 公訴時効が完成している事件は捜査されるか

公訴時効が完成していることが明らかな事案であれば、逮捕等の強制捜査はもちろん、任意の事情聴取も含め、捜査そのものがなされないのが通常です。最終的に起訴ができない以上、捜査の必要性が認められないからです。

もっとも、一見すると時効が完成しているように思えるがなお時効が完成していない可能性も存在するような、捜査して初めて公訴時効の完成について判断できる事案においては、当然必要な捜査は行われます。例えば被害届では強盗罪に該当するように思えるが、なお強盗致傷罪の成立可能性が窺われるような場合などが挙げられます(公訴時効は、強盗罪が10年、強盗致傷罪が15年なため、時期によっては成立する罪により公訴時効の完成が左右されるためです)。

なお過去には、警察が公訴時効の完成から1年も経過していることに気づかずに容疑者を逮捕してしまったという事案がありましたが、これは非常に稀なケースといえます。

 

4 公訴時効はあくまでも刑事事件での話

これまで見てきた公訴時効制度は、あくまでも刑事事件において起訴されず、それゆえ捜査の可能性も低くなるというものでした。

したがって、本件のように刑事事件とは別に問題となる可能性はあります。本件のような人事上の場面や、民事上の賠償責任などが考えられるところです。

そのように後々になって問題となることを避けるためには、犯行発覚時に、被害者に真摯に謝罪し、決して再犯しないことを誓約の上で、他言しないように約束してもらうことが考えられます。

そのような約束は本人達のみでもできますが、弁護士を間に入れてしっかりと書面を取り交わすと、より確実といえるでしょう

 

執筆者・越田 洋介の写真

執筆者情報

越田 洋介Yosuke Koshida

弁護士法人 横浜パートナー法律事務所 弁護士