万引き犯が別人の名を名乗って逮捕
本名がわからなくても逮捕されるの? どうやって特定している?

1 報道の概要

鳥取県米子市内のスーパーで、チーズ1袋を盗んだとして、自称・愛知県豊田市に住む無職の男(67)が逮捕されました。

調べによりますと男は23日午後、鳥取県米子市内のスーパーで、チーズ1袋(販売価格408円)を盗んだ疑いが持たれています。

店の関係者からの届け出を受け、警察が捜査していたところ、通報の内容と似た風貌の男を近くで見つけ、チーズを所持するなどしていたことから容疑が固まったとして逮捕しました。男は「間違いありません」と容疑を認めているということです。

男は当初、61歳の別の名前を名乗っていましたが、詳しく調べたところ、67歳と判明したということです。

 

2 現行犯逮捕は、本名が分からなくてもよい

この件が現行犯逮捕かどうかはわかりませんが、現行犯逮捕の場合は、本名がわからなくても逮捕できます。それは、現行犯の場合、逮捕状が不要だからです。

そもそも、現行犯の場合は、そこに犯人と疑われる人がいるわけですし、名前を確認しないと逮捕できないというのはナンセンスでしょう。容疑者が本名を語らなかったとしても問題ありません。

 

3 逮捕状で逮捕する場合は、原則として本名が必要

一方で、逮捕状で逮捕する場合は、原則として容疑者の本名が必要になります。それは、「目の前のこいつ!」という指示ではなく、誰を逮捕するのかを(誰から見ても)明確にする必要があるからです。逮捕状は、第三者である裁判官が発付します。裁判官は、万が一にも関係ない人を逮捕することがないように、氏名などで逮捕される人を明らかにして逮捕状を発付しなければなりません。そのため、原則として逮捕状を請求する上で、本名が必要になるのです。

 

4 本名がわからなくても、写真などで特定できればOK

しかしながら、この事件のように、容疑者が本名を語らないことも多いといえます。法律も、そのような事態を想定しており、氏名不詳者でも、人相や体格など、人を特定するために必要な事項で特定すれば足りるとされています。

実際にも、写真等を添付して人を特定することが多いです。裁判官も、写真で特定されていれば、「ああ、この人を逮捕したいんだな」と判断できますし、それを踏まえて発付された逮捕状を見た警察も、「ああ、この人を逮捕していいんだな」と考えるわけです。

以上のように、人の本名がわからなくても、実務では問題にならないようなシステムになっています。

 

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執筆者情報

杉浦 智彦Tomohiko Sugiura

弁護士法人 横浜パートナー法律事務所 弁護士