駅のエスカレーターで利用者に硫酸をかけた男を捜索中との報道!

1 報道の概要

東京メトロ南北線白金高輪駅(東京都港区)で8月24日夜、男が会社員(22)に硫酸とみられる液体をかけるなどして顔や肩に全治6ヶ月の重傷を負わせたという事件が報道されました。

取材によれば警察は25日、防犯カメラの映像から、男性が会社員の後をつけて、エスカレーターから降りたところに急接近して硫酸を浴びせた様子を確認したとのことです。この事件で、会社員の後ろにいた女性(34)も硫酸ですべって転び、足にやけどを負いました。警察は、男の画像を公開し、傷害容疑で男の行方を捜索しています。

今回はこの事件を題材に、傷害事件の弁護活動を解説します。

 

2 「怪我させるつもりなかった」は通用する?

今回、逃げている男性がした行為は、会社員に重傷を負わせる危険な行為でした。ただ、硫酸には、会社員を殺害する威力までは無いでしょう。会社員に与えた重傷については、殺人未遂罪ではなく、傷害罪が成立するでしょう。

今回、男性は、会社員を予め狙っていたかのような行動をしています。被害にあったもう一人の女性は、いわば巻き込まれた形になるでしょう。では、女性を怪我させるつもりが無かったとしたら、女性のやけどについて、男性はお咎め無しでしょうか。

そういうわけにも行きません。今回、男性は「硫酸をかけて人を怪我させる」という意図自体はあったものと考えられます。そうであるならば、女性の怪我に対しても責任を負わせるべきと考えるのが、刑法で説かれている考え方です。

ですから、女性の怪我に対しても、傷害罪が成立する可能性が高いでしょう。

 

3 逮捕の可能性は?どのような罰則が科せられる?

今回、男性は逃走していると考えられますが、マスクを着用した姿の画像を警察に公開されています。男性は、被害にあった会社員の関係者で、恨みをもった者の可能性もあります。これらのことから、男性が誰か特定され逮捕される可能性は十分にあります。逮捕は、逃亡のおそれを防止する意味がありますから、今の男性に真っ先に行われる可能性のある処分です。

傷害罪は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金とされています。今回の事件は、危険物質である硫酸を用意するという点で、ただ喧嘩で手が出た場合とは違うものです。被害者が2人も出ており、全治6ヶ月の重傷という被害は、とても50万円という金額で評価できるものではないでしょう。刑事手続が始まれば、正式裁判となり、懲役刑を求刑される可能性が高いです。
 

4 傷害罪の弁護活動

今回ケースは、証拠がそろってしまっていますが、誰が犯人であることまでは発覚していません。男性には、逮捕の可能性があります。いつ逮捕されるか分からない危険をかかえて生活するのは、とても辛いものがあると思います。

弊所では、弁護士による自首同行という弁護活動を行っています。自首は、逮捕の可能性を極限まで減らす効果があります。自分から犯人であることを名乗る者は、逃亡のおそれが少ないからです。自首同行をご依頼頂ければ、刑事手続の初期の段階で弁護人をつけることにもなりますので、取調べのアドバイスをいち早く聞くこともできます。

また、今回の事件では、自首などがされれば、刑事手続が進み、ほぼ間違いなく検察官のところまで行くでしょう。弁護人としては、不起訴を目指して、被害者の方との示談交渉に臨みます。被害者が2人であれば、示談交渉をするお相手も2人です。お二方に対して謝罪金を受け取っていただき、事件を許してもらえるよう交渉することになります。2人に対する示談が成功さえすれば、不起訴になる可能性も高いです。もっとも、今回の事件では、会社員の方との示談は難航することが予想されます。それでも、誠心誠意謝罪することは、情状を良くするためには大事なことです。

 

5 弊所は多くの傷害事件を扱ってきました

お酒を飲んでいて、取っ組み合いの喧嘩になった、何人かで相手をリンチした、道端でぶつかった人に手をあげた。弊所は多くの傷害事件のご相談を頂いております。

ぜひ経験のある弊所弁護士にご相談下さい。

 

執筆者・原田 大士の写真

執筆者情報

原田 大士Daishi Harada

弁護士法人 横浜パートナー法律事務所 弁護士