着替えていた女性を盗撮した疑いで、男性が撮影罪で逮捕されたとの報道!?

1 県内初の撮影罪逮捕が続出

7月30日、山形県の海水浴場の更衣室で着替えていた女性を盗撮した疑いで、56歳の男性が撮影罪で逮捕されたとの報道がありました。2023年7月13日に施行された撮影罪での逮捕は、県内初の事案になるとのことです。

7月に新設された撮影罪が早速運用され、県内初の逮捕が各地で起こり、報道されています。これまでの盗撮規制とどのような違いがあるのかなど、盗撮事件に詳しい弁護士が解説します。

 

2 撮影罪とは何か

撮影罪は、「性的姿態等撮影罪」ともいい、今年7月13日に施行された「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律」に定められています(以下「性的姿態撮影等処罰法」といいます)。

性的姿態撮影等処罰法では、4つの性的な撮影行為が盗撮罪として規定され、禁じられています。盗撮についていえば、正当な理由なく、ひそかに人の性的姿態等を撮影すると、撮影罪として処罰される可能性があります(性的姿態撮影等処罰法2条1項1号)。

 

3 性的姿態等の定義

撮影罪は、「性的姿態等」を撮影することで成立します。
  性的姿態等とは、以下のいずれかと定義されています。
  ① 性的な部位(性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部)
  ② 人が身に着けている下着のうち現に性的な部位を覆っている部分
  ③ わいせつな行為又は性交等がされている間における人の姿態
つまり、撮影される相手が、本来見せたくない、取られたくないような性的な姿や振る舞いが意思に反して撮影されることを、性的姿態撮影等処罰法は防止しています。

冒頭のニュースでは、更衣室で着替えている女性を撮影したとの疑いで、男性が撮影罪の疑いで逮捕されています。性的な局部や性的な部位を覆う下着に向けられて撮影がされたのであれば、まさに撮影罪の典型例になりえる事案といえます。

 

4 撮影罪と迷惑行為防止条例との違い

これまでも、今回のような盗撮事案は、県の迷惑防止条例で検挙や処罰がされていました。しかし、新法の設立で、迷惑防止条例だけによる規制から変更が生じました。
  大きな変更点を挙げると、以下の3点です。
  ①全国一律で盗撮を規制することができるようになった
  ②撮影行為だけでなく、盗撮画像の提供や保管、記録なども処罰する規定がある
  ③法定刑が高く設定され、一定の盗撮について、厳罰化も可能になった

 

5 撮影罪の法定刑

新法設立による大きな変更点が、法定刑の重さです。

撮影罪に該当するような撮影を行った場合、「3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金」となります。拘禁刑は、2025年の刑法改正までは、懲役刑として読み替えられます。

各県の条例が、単独の盗撮については概ね「6か月以下」や「1年以下」の懲役刑を定めていたことを考えると、今後、新法の適用によって、性的姿態等を撮影する行為は撮影罪として厳罰化される可能性が高いでしょう。

本件でも、初犯と言うことであれば、従前同様罰金刑に留まる可能性が十分ありますが、罰金額が、従前よりも高くなる可能性があります。

 

6 撮影罪をしてしまった方のためにとりうる弁護活動

このように、性的姿態撮影等処罰法で逮捕された事案は、従前よりも厳しい処分が待っている可能性がありますが、仮に弁護士が被疑者から依頼を受ければ、すべき弁護活動はたくさんあるように思います。

まずは、今回の男性のように、依頼者が逮捕されている場合、当然ながら、弁護人は依頼者の早期身体解放に向けた弁護活動を行います。

そして、早期身体解放を実現するためにも、また、刑が減刑ないしは不起訴になるよう検事と交渉するためにも、被害者の方に謝罪を尽くす示談活動は、新法施行後でも重要な弁護活動になるでしょう。

 

7 撮影罪として家族が捕まった、捜査を受けているという方はまずご相談ください

撮影罪としての逮捕事例は徐々に報道されはじめてきましたが、裁判例や、実務運用の蓄積はこれからですので、今後の動向次第のところもあります。

しかし、刑事事件や盗撮事件に明るい弁護士の知見や経験は、新しい処罰法の中でも有効です。

捜査は模索をされながらも進んでいきますし、盗撮をしてしまった方にとっては、性的姿態撮影等処罰法の新設を他人事にすることはできません。

まずは独りでお悩みにならず、弁護士にご相談下さい。

 

執筆者・原田 大士の写真

執筆者情報

原田 大士Daishi Harada

弁護士法人 横浜パートナー法律事務所 弁護士