男性更衣室で女児の裸を撮影して逮捕!被害児童が特定されなくても逮捕されるの?強制わいせつになる場合との違いは?余罪はどこまで調べられるの?弁護士が解説します

1 事案の概要

報道によると、2022年8月に温泉施設の男性更衣室で着替えをしていた6~7歳の女の子の動画をひそかに撮影・記録して、児童ポルノを製造したという疑いで、28歳の男性が逮捕されました。

この件は、別件で逮捕された容疑者が、その捜査の過程で今回の容疑が発覚したものです。年齢が曖昧であるため、おそらく被害児童が誰かについて特定はされていないと思われます。

この記事では、①被害児童が特定されていない事件でも逮捕されるか、②裸の撮影をした場合に強制わいせつになることもありますが、その差はどこにあるのか、③余罪はどこまで調べられるのかを、弁護士が解説します。

 

2 被害児童が特定されていなくても捜査対象になり逮捕されるか

一般的には、被害児童が特定されていない場合は、被害児童の年齢の特定が困難であることから、捜査対象にされることは少ないです。これが、温泉等での盗撮事件で、なかなか児童ポルノの罪名がつかない理由です。

しかしながら、被害児童の特定が必須というわけではありません。医師などの専門家の鑑定によって、明らかに幼いということが証明できれば、児童ポルノであることを立証することができるため、それによって捜査を進めることは可能です。

あくまで当事務所で把握する限りですが、被害児童が小学校低学年以下だと思われる事案では、このような被害児童が特定されずに捜査される事例があるようです。

今回は、6~7歳ということなので、かなり幼い事件であったということと、おそらく悪質性が高いと思われる事情もあり、医師による年齢鑑定が進められて、捜査がされたのではないかと思われます。

 

3 強制わいせつになる場合

また、裸の写真を撮影した場合、「強制わいせつ」という罪に該当することもあります。最近よくある、SNSで裸の写真を送ってもらうというタイプの犯罪で、被害児童が13歳未満の場合は、通常は児童ポルノ製造に加えて、強制わいせつも成立します。

今回、なぜ強制わいせつが付かなかったのかについてはよくわからないところがありますが、①年齢鑑定を行っているが、13歳未満であるということまでは立証できない可能性がある(※児童ポルノは18歳未満であることまで立証できれば良い)ため挙げなかった、または②動画がおぼろげで、「わいせつ」とまでは評価できないレベルだったという可能性が考えられます。

 

4 余罪はどこまで調べられるか

さらに、この件は、余罪捜査の関係で発覚しています。

このような盗撮案件は、余罪が多数あるのが通常です。しかしながら、その余罪まではなかなか捜査の手が及ばないということが多いです。それは、結局撮影されている被害児童が誰なのかを特定することが困難だからです。当事務所で取り扱った案件でも、被害児童が特定されない限りは、ほとんど立件されていません。

今回、被害児童が特定されていないにもかかわらず、余罪捜査がなされており、その点は極めて特殊な案件だといえます。もしかすると、この事件全体が悪質性の高い案件で、余罪についても起訴して、実刑判決を与えたいなどの事情があるのかもしれません。このあたりについては、今後の報道を見守る他ないといえるでしょう。

 

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執筆者情報

杉浦 智彦Tomohiko Sugiura

弁護士法人 横浜パートナー法律事務所 弁護士