県立高校野球部監督が生徒に暴行との報道!?

1 報道の概要

県立高校の野球部監督が、練習中にノックでボール渡しをしていた1年生の男子生徒の頭をバットで殴りケガをさせた事件で、県警は64歳の被疑者を傷害の疑いで書類送検した。元監督は発覚後に指導を自粛し辞任していて、調べに対し「殴ったことに間違いはない」と容疑を認めている。男子生徒は事件後、適応障害を発症し退部していて、男子生徒の父親は、読売テレビの取材に対し「逮捕されるような重い刑を求めていたが残念。監督には罪の重さをわかってもらい反省してほしい」とコメントしている。

以上の事案をもとに、法的に問題となる点を解説します。

 

2 体罰と暴行傷害罪

昭和の時代ですと、教師による生徒への「指導」という名の暴力は、かなり広く認容されていました。そのような「常識」が残っている指導者が、今でも暴力的な「指導」を行うことはあります。特に、運動部などでは定期的に事件として明らかになっています。

いずれにしても、暴力が「指導」とされることはないし、問題とされればそれらは刑事事件として裁かれることになります。昭和の時代の様に、「先生も熱心さゆえに。。。」ということで、簡単に情状酌量されるようなことはありません。

 

3 適応障害についての処罰

本件で被害生徒は、怪我をしたうえで「適応障害」となっています。このような「適応障害」を発生したことについても、刑事処分がなされるのかが問題になります。ただ、基本的にこのような、怪我に付随して生じた結果については、独立して処罰の対象となることはありません。その一方、全体の情状などを判断するときには評価され、その分重い処分とされる可能性はでてきます。

 

4 逮捕されるのは重い罪?

被害生徒の親は、「逮捕されるような重い刑」を求めていました。親の気持ちとしてはもっともです。ただ、逮捕自体は「刑」とは必ずしも関係ありません。逮捕されない場合でも、実刑判決ということで、刑務所に収監される事案は、それなりに存在します。ただ、一般的には、重い刑ほど逮捕されやすいことに間違いはありません。

本件の場合、怪我の度合いにもよりますが、逮捕されてもおかしくなかった事案だと考えられます。

 

5 本件の弁護活動

本件の場合、傷害罪の被害者である男子生徒に対して、十分な謝罪、二度と行わないことの誓約を前提に、損害賠償のうえ、示談をすることが必要です。相手方が許してくれるようでしたら、社会的な制裁と相まって不起訴処分となる可能性も出てきます。

もちろん、本人や親の怒りが強い現状では、示談自体かなり難しいと言えますが、弁護士としては、できる限り本人の誠意を被害者側に伝えて、このような活動を十分サポートする必要があります。

 

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執筆者情報

大山 滋郎Jiro Oyama

弁護士法人 横浜パートナー法律事務所 代表弁護士