夏に発生する可能性の高い海水浴場での盗撮事件・不起訴の可能性などを弁護士が解説します

1 事件の概要

海水浴場に来てシャワーを浴びていた女児の裸を盗撮したとして、無職の男性(55歳)が児童ポルノ禁止法違反で逮捕されたとの報道がありました。被害女児は小学生以下とみられ、近くにいた海水浴客から「カメラを持った変な人がいる」と交番に通報があり、容疑が発覚したそうです。

今回は、この事件を題材に、児童ポルノ禁止法違反事件の刑事弁護について解説します。

 

2 盗撮に成立する犯罪

男性は、児童ポルノ禁止法違反で逮捕されています。

一般に、盗撮をすると、まずは各県が定める迷惑行為防止条例犯にあたる可能性があります。条例違反は、立派な犯罪になります。相手が18歳未満で、撮影した画像が性的な刺激の強いものであれば、児童ポルノ禁止法違反(製造)が成立する可能性があるでしょう。法定刑は、児童ポルノ禁止法(製造)の方が厳しくなっています。

男性は、女児の裸を撮影した疑いがあるため、迷惑行為防止条例違反にとどまらず児童ポルノ禁止法違反の容疑で逮捕されたのです。

 

3 裸になったことについての論点

報道からすると、女児はシャワーを浴びていたところを盗撮されたようです。シャワーは仕切りがあって部屋になっていたかもしれませんが、仕切りがなく、ビーチに開かれていた可能性もあります。

仮に仕切りのないシャワーで女児が裸になっていた場合を考えます。ビーチや川などで、小さい児童を裸にして着替えさせるといったような光景を一度は目にした方もいるかもしれません。そういう場合、女児や家族に公然わいせつが成立するのでしょうか。

公然わいせつ罪の「わいせつな行為」は、「性欲を刺激、興奮又は満足させる行為であり、普通人の性的羞恥心を害し、善良な性的道徳観念に反するもの」と定義されます。

「わいせつな行為」は時代や場所によって範囲が異なってくる概念であり、線引きが難しく、また行為の具体的な仕方で結論も変わってくるでしょう。

ただ、親が小学生にも満たない児童の着替えを手伝って短時間児童を裸にしたというだけでは、それが「わいせつ」であると評価されて検挙される可能性は高くないでしょう。

 

4 逮捕の可能性

海水浴場での盗撮は、今回のニュースのように相手に発覚されやすいでしょうし、そこから現行犯逮捕されるという可能性が十分ある行為です。

今回の事件でも、おそらく男性は現行犯逮捕されたものと思われます。こういったケースですと、逮捕にともなってカメラ機器が押収されるとともに、家宅捜索が行われ、家の中の記録媒体が押収される可能性があるでしょう

この男性はともかくとしまして、他の盗撮に関する証拠がカメラや記録媒体に納められているケースも多いです。

ただ、必ずしも全てのケースが立件されるとは限りません。画像や動画から被害者が特定できず、その処罰感情を確かめられない余罪の盗撮については、書類送検までいかないという傾向があります。

 

5 盗撮被疑者の弁護活動

これまで見てきたとおり、盗撮は逮捕も考えられる犯罪です。素直に事件を認め、反省を示せば、現行犯逮捕と取調べの後、釈放されることもありますが、そうでない場合は、ご家族の方が弁護士に相談するなどして、なるべく早く解放のための手続きをとってもらったほうが良いでしょう。

また、盗撮はれっきとした犯罪であるため、前科がつくとともに、初犯であれば多くの場合で罰金刑となります

事件を反省されているというお気持ちであれば、被害者の方に謝罪の意思を伝えてもらうよう、弁護人に依頼するとよいでしょう。いわゆる示談です。

今回のケースのように、被害者が小学生以下の未成年であれば、被害者の保護者の方が、直接の話し相手になります。被害者とそのご家族の方に謝罪の意思をつたえ、謝罪金をお支払いするのが一般的です。

また、事件現場の海岸には立ち入らないといったような誓約をし、誠意を尽くします。そのようは話し合いの末に相手から事件を許して貰えれば、不起訴処分の結果が得られる可能性が高いです。

 

6 夏の季節と盗撮

最近は、コロナウイルスの規制も関係してくるところはあるとは思いますが、夏になると、やはり盗撮の被害や、反対に盗撮をしてしまったというお問い合わせが多くなる傾向があるように思います。海岸など、肌が露出される現場では、盗撮の被害が生じやすい一方で、事件も発覚しやすいように思います。

盗撮をしてしまって、事件が発覚しないか悩まれている方、警察の捜査を受けている方等、お困りの際は、弁護士にご相談されることをお勧め致します。

 

 

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執筆者情報

原田 大士Daishi Harada

弁護士法人 横浜パートナー法律事務所 弁護士