痴漢容疑で消防士が逮捕されたとの報道!?

1 報道の概要

走行中の電車内で、隣に座っていた20代女性の太ももを触った疑いで消防士の男(37)を12日に現行犯逮捕した。逮捕時は「身に覚えがない」と容疑を否認していたが、現在は認めているという。同署によると、電車が駅に停車した際、男は逃げようとしたが、被害に遭った女性が取り押さえた。

西宮市消防局によると、男は当日非番だった。いったん釈放されたが、上司に逮捕の件を報告せず、府警から同消防局に照会があった今月11日まで勤務を続けていたという。この消防士は、同僚の顔を殴り、3月に懲戒処分を受けていた。

以上の報道内容をもとに、問題となる法的論点を解説します。

 

2 現行犯逮捕?

このような報道では、「現行犯逮捕」との意味を誤解していることが多々あります。本件は、事件のあった日に一度釈放されて、その後にまた逮捕されています。事件後に改めて逮捕される場合は、現行犯逮捕ではなく、逮捕令状を用意しての通常逮捕です。

現行犯逮捕は、正に犯罪が行われたときになされる逮捕のことであり、警察官ではなく普通の人でも行うことができます。本件では、被害者の女性が消防士を取り押さえたことが、「現行犯逮捕」に該当することになります。

 

3 後から逮捕されることもあるの?

電車内での痴漢などの場合は、その場で釈放されたなら、在宅で捜査が継続されるのが普通です。本件のように、後から改めて逮捕されるようなことはあまり例がありません。

本件の場合、消防士の男が自分の職業その他の個人情報を偽って警察に申告していたなど、悪質と言える事情があったのかもしれません。さらに言えば、消防士などの公務員の場合は、一般の会社員などに比べて、より厳しい対応がなされることも間違ありません。

 

4 本件の弁護活動

本件は、被害者のいる犯罪なので、謝罪と損害賠償から示談が大切になって来ます。ただ、弁護士の立場で本件のような被疑者の弁護をするときには、余罪の存在に非常に注意する必要があります。同僚に暴力をふるい懲戒まで受けておきながら、またこのような事件を起こすような人は、他にも何か犯罪行為にかかわっている可能性も十分あります。警察も、同じように疑うことから、余罪についても調べます。余罪対応まで含めての、丁寧な弁護活動が必要になって来るケースと言えます。

 

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執筆者・大山 滋郎の写真

執筆者情報

大山 滋郎Jiro Oyama

弁護士法人 横浜パートナー法律事務所 代表弁護士