都迷惑防止条例違反に問われた被告の控訴審で、無罪とした1審判決を破棄し、有罪を言い渡したとの報道!?

1 報道の概要

スカートをはいた女性の尻を背後から動画で撮影したなどとして、東京都迷惑防止条例違反に問われた被告(51)の控訴審で、東京高裁は12日、無罪とした1審・東京地裁立川支部判決を破棄し、有罪を言い渡した。

判決によると、被告は2020年5月、東京都町田市のアニメグッズ店で、20歳代女性の後ろから小型カメラで尻などを撮影したという。

 

2 そもそも「盗撮」とは

今回の事件を把握するには、盗撮行為が法令上どのように位置づけられているのかを理解する必要があります。
そもそも「盗撮」について、法令上の厳密な定義はありません。

ただし、一般的に盗撮と聞いてイメージする行為、例えばカメラ等でスカート内を撮影する行為や、人が裸でいる場面を隠し撮りする行為などは、各都道府県の迷惑防止条例によって禁じられています。

東京都の場合、条例の第5条1項2号にて、「…人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。」(抜粋)として、これを禁じています。

したがって、一般的に、『「盗撮」とは「人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、…撮影」することなど』と定義できるでしょう。

 

3 「着衣の上からでも盗撮」は正確か

本件について、報道記事では「裁判所は着衣の上からでも盗撮にあたると判断した」といった記載が散見されました。

確かに盗撮に明確な定義がない以上、誤った表現ではありません。ただ、前記条例第5条1項2号の規定、そしてそれを前提とした一応の定義付を踏まえると、この表現には違和感を覚えるでしょう。

実際、裁判所も本件において、2号の規定ではなく、「人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をすること」を禁じた3号にあたると判断したものと思われます。

報道記事によれば「判決は、被害者との位置関係や撮影方法を考慮し、衣服の上からでも下着や体を撮影しようとしたとみられる場合は、条例が禁じた「卑わいな言動」に当たると指摘。女性が前かがみになった際、被告がカメラを隠して至近距離から撮影したことなどを踏まえ、条例に違反する行為であることは明らかだと結論付けた。」とのことですから、そのように考えるべきでしょう。

したがって、「着衣の上からでも盗撮」というよりは、「着衣の上から撮影行為であっても罰せられ得る」という理解の方がより正確といえるでしょう。

 

4 結論は変わらない

これまで、やや込み入った法律の仕組みについて検討してきましたが、最も重要な結論に関しては変わりありません。
それは、着衣の上からの撮影行為であっても罰せられ得る、ということです。

もちろん、撮影行為全般が洋服の上からであれば撮影しても問題ないと誤解している方が少なくないですが、撮影態様によっては、本件同様に条例違反として罰せられる可能性があります。

最近は、防犯カメラでの行動把握、ICカード等での個人情報との紐付けなどにより、犯行及び犯人の特定が容易になってきています。

安易な気持ちで撮影してしまい、刑事事件になるのではないかと不安な方は、速やかに弁護士に相談すべきでしょう。

 

 

執筆者・越田 洋介の写真

執筆者情報

越田 洋介Yosuke Koshida

弁護士法人 横浜パートナー法律事務所 弁護士