1年前の痴漢容疑で、高校教諭が逮捕されたとの報道!?
1 報道の概要
千葉県の県立高校で教諭職をしている男性(29)が、路上で見知らぬ女性の体を触ったとして、千葉県迷惑防止条例違反(痴漢)の疑いで逮捕されたという報道がありました。
容疑は、昨年の9月某日午後9時ごろ、路上で県内居住の女性の体を触ったというもので、「後をつけられ、スカートをめくられた。何かが尻に触れた」という女性の通報があったそうです。別事件の捜査に男性が浮上したことで、今回の逮捕に至ったそうです。
今回は、この報道を前提に、痴漢事件の弁護活動について解説します。
2 痴漢にはどんな罪が成立するのか
痴漢は、一般に、各県の迷惑防止条例違反となります。初犯であれば、概ね30万円前後の罰金となるのが相場です。とはいえ、悪質なケースでは罰金額がより高くなることもあります。
また、今回の事件では、女性は、スカートをめくられ、お尻を触られたと言われています。少し触っただけであれば迷惑防止条例違反にとどまるでしょうが、仮にお尻を触る時間が長かったり、触り方が乱暴だったりすれば、より重たい強制わいせつ罪とされる可能性もあります。
3 事件発覚から逮捕まで
痴漢は、相手が被害に気づいていることがほとんどですから、今回の事件のように、通報される可能性が高いです。通報され、被害届が出されると、警察は捜査を開始し、被害者から話を聞くとともに、路上の防犯カメラなどに証拠が残ってないか確かめ、犯人を特定しようとします。しかし、必ずしもすぐに犯人が見つかるわけではなく、犯人が被害現場付近にあまり出没しない場合、捜査は難航することもあります。
今回も事件から男性の逮捕まで1年かかっており、捜査がスムーズだったとは決して言えなさそうです。もっとも、報道では、別事件の捜査で男性が浮上したことで、逮捕に至ったそうです。警察は、通報があった当時、証拠が散逸しないよう、防犯カメラ映像などを収集して保管しておいたのでしょう。あくまでも推測の域を出ませんが、男性が、同じ管轄や場所で同じような事件の被疑者として浮上したことで、再捜査などがされ、逮捕されるだけの容疑が固まった可能性があります。
真相はともかく、複数の痴漢事件を起こしている方は、一度しただけの方よりも、特定や逮捕のリスクが高いということが一般的に言えます。
4 今回の事件の弁護活動
男性は逮捕されています。男性の弁護人は、少しでも早い段階で男性を外に出そうと尽力します。一般的に逮捕された人は、次に勾留という処分をされることが多く、勾留されると、逮捕よりも長く身体を拘束される可能性が出てきます。そこで弁護人は、勾留がされるのを阻止しようとするだけでなく、勾留がされれば、準抗告という抗議をすることで、出来るだけ被疑者が早く外に出られるよう努めます。
また、弁護人は、男性に刑事処分がされないように、弁護活動を行います。その中で最も重要なのは、示談活動です。今回は、被害者が特定されている事件です。弁護人が、被害者に本人の謝罪の意思を示し、謝罪金を受け取ってもらえるか交渉します。その上で、被害者に「許す」という言葉をもらえれば、示談活動は成功です。成功すれば、男性は不起訴になる可能性が十分あり、起訴されなければ刑も前科もありません。
もっとも、複数事件が発覚している方の場合、複数の示談交渉を同時に進めていかなければならないことにもなるので、注意が必要です。
5 痴漢事件で逮捕されるリスクを下げるために
痴漢事件は、児童買春事件や盗撮事件よりも、被害者や周囲の人が事件に気づきやすい点で、より検挙のリスクが高いように思われます。
特に、ある事件で在宅捜査されていて、他の痴漢事件についてまだ追求されていない方は、その痴漢事件が特定されるリスクに気をつけられたほうが良いでしょう。
痴漢事件を起こしてお悩みの方は、まずは弁護士にご相談下さい。
執筆者情報
原田 大士Daishi Harada
弁護士法人 横浜パートナー法律事務所 弁護士