盗撮したとして迷惑行為防止条例違反の疑いで書類送検したとの報道!?
1 改造カバンで複数の盗撮をした疑いで会社員が書類送検
改造したカバンにスマートフォンを入れて、女性のスカート内を駅構内などで盗撮していたとして、京都の警察署が22日、男性会社員(56)を府迷惑行為防止条例違反の疑いで書類送検したという報道がありました。男性の携帯からは、盗撮したとみられる動画44本が見つかり、そのうち41本は、5人の被害女性のものだそうです。男性は、2019年の12月から100件以上やったと供述していますが、今回書類送検されたのは、先程の5人の被害女性についての盗撮事件であるようです。
今回は、この事件を題材に、盗撮事件の弁護活動について解説します。
2 スカート内が撮れていなくても盗撮になる?
男性は、カバンに穴を空け、カバンの中に台座をつけるなどしてスマートフォンを固定して外が撮影出来るようにしていたそうです。外が撮影できるとはいえ、カバンのコントロールは難しいでしょうから、被害女性たちにカメラを向けても、スカート内が必ずしも撮れていない場合もあったのではないでしょうか。
法律上は、スカートの中が撮れているかどうかは、犯罪の成立をあまり左右しません。京都を含め、多くの迷惑行為防止条例では、盗撮目的でカメラを相手に向けただけで、犯罪が成立するようになっています。
男性が持っていた44本の動画は、様々な内容だったでしょうが、カメラを被害女性たちに向けたことを示すには十分な証拠だったと考えられます。
3 盗撮は全ての被害者に対して立件されてしまうか
盗撮は、後日警察沙汰になることもある犯罪です。後日逮捕などを心配したご相談者様から、自首をしたいので手伝って欲しいというご相談やご依頼を頂くことも多いです。
ご相談者様の中には、これまで何回も盗撮をしてしまっており、目下の事件だけでなく、過去の別件についてもお悩みになる方も多くいらっしゃいます。そのような方から、「これまでしてきた盗撮全てが立件されてしまいますか」と質問を頂くことがあります。
確たる答えはないのですが、実務上は、被害者が特定されないと、1回や2回の盗撮部分については、書類送検しないという判断をする警察署もあります。送検されないので、その部分については刑罰を科されません。
今回の男性も100件以上盗撮をしてきたと言っていますが、カバンを使っての犯行ですから、被害者も気づいていない可能性があり、そうなると、被害者特定は難しく、事件の一部は書類送検されないと思われます。
その一方で今回は、盗撮動画41本が特定の女性5人の写真で、その5人分につき書類送検がされたといいます。残っている動画が多く、被害者が5人とも判明して送検になった可能性があります。また、男性が何度も同じ女性5人を狙って盗撮をしていたのだとすれば、重大事件と判断され、被害者が見つからなくても書類送検されたということもあり得ます。
4 複数名の被害者がある中での弁護活動
先程のお話からもおわかり頂ける通り、駅などで起きた盗撮事件で、5人分の盗撮が書類送検されるというのは、比較的珍しく、大きい事件です。
ですから、今回の事件を弁護して、5人分すべての事件について不起訴にするということは、かなりハードルが高いです。
しかしながら、弁護人としては、不起訴を目指し、特定された被害者全員との示談交渉に望みます。また、被害者が特定されていない場合でも、贖罪寄付をすることで不起訴にしてもらえないか等、情状を積み重ねて検察官と交渉します。
5 数えきれないほど撮影をしてしまっていたのだとしても・・・
弊所には、100件以上の盗撮をしている方でも、複数事件について送検された方でも、不起訴にできた経験がございます。
自分でも分からないほど盗撮をしてしまい、「もう後戻りできない」「被害者全員と示談するお金は無い」と諦めてしまう前に、まずは弁護士に相談して下さい。
執筆者情報
原田 大士Daishi Harada
弁護士法人 横浜パートナー法律事務所 弁護士