置き忘れのプリペイドカードを持ち去ったとして、高校の校長が懲戒処分を受けたとの報道!?

1 報道の概要

愛知県の県立高校の校長が、県教育委員会の主査を務めていた3年前に、ガソリンスタンドに置き忘れてあったプリペイドカード(約8000円聞)を持ち去っていたなどとして、停職6か月の懲戒処分を受けたとの報道がありました。

校長は、窃盗の疑いで書類送検され、起訴猶予になったことを委員会に報告しませんでしたが、今年の3月に匿名のメール通報が委員会にされたため、事実が発覚したとのことです。

今回は、この事件を題材に、教師による窃盗事件についての弁護活動を解説致します。

 

2 窃盗罪か横領罪か ~置き忘れた物をとると何罪が成立するのか~

校長は、置き忘れになっていたプリペイドカードを持ち去ったことで、窃盗の疑いで書類送検されたとあります。確かに、置き忘れになっていた物を持ち去ると、窃盗罪になる可能性があります。

その一方で、状況によっては、窃盗罪ではなく、占有離脱物横領罪が成立する可能性があります。占有離脱物横領罪のほうが、窃盗罪よりも少し刑が軽いので、「窃盗罪ではなく、占有離脱物横領罪が成立する」と弁護人が時々主張することがあります。

二つの罪の違いはどこにあるのでしょうか。物にまだ支配が残っているのを奪うのが窃盗、支配から離れた物を自分の物にしてしまうのが占有離脱物横領です。

本件では、窃盗で書類送検されたとのことですが、書類送検されてから後になって、占有離脱物横領だと判断される事件もあります。弁護人としては、事情によっては、占有離脱物横領だと主張して、刑を軽くする活動を行うことになるでしょう。

 

3 窃盗や占有離脱物横領の弁護活動

窃盗や占有離脱物横領は、他人の物を持ち去ってしまう行為です。

ですから、弁護活動としては、物を返還し、被害弁償をするお手伝いをすることが最低ラインとなります。その上で、謝罪金までうけとってもらい、合意書の中で事件を許してもらえるようお手伝いする「示談交渉」をするのが主な弁護活動です。

今回のような被害額のケースで初犯であれば、示談さえ成功すれば、不起訴になることも十分あり得ます。今回の事件も、校長は起訴猶予で済んでおり、示談が成功した可能性があります。

 

4 教師特有の問題

教師が犯罪をしてしまうと、社会的な関心を集めることから、報道されてしまうリスクが一般人よりも高いと言えます。とくに実名報道は、逮捕に伴ってされることが多いため、逮捕されてしまうと、報道リスクはさらに高まります。

そこで、弊所は、逮捕の可能性が高い事案であれば、まだ発覚していない窃盗をされた方に、弁護士同行のうえで自首することをお勧めすることがあります。自首には、逮捕のリスクを大きく減らし、実名報道のリスクを下げる効果はあります。

ただ、教師については、たとえ刑事処分は不起訴になっても、懲戒処分の対象になる可能性が非常に高く、その点は悩ましいところです。弁護人としましては、プライベートでの窃盗であれば、学校への申告義務なども一般的にはありませんので、学校への黙秘をお勧めすることもあります。

それでも、今回の校長のように、うわさがどこからともなく生じ、匿名メールで委員会に告発されてしまうというリスクを減らすのは難しいです。

 

5 窃盗事件をされてお悩みの方はご相談下さい

今回の場合では、事件当時校長が責任の大きい立場であったこともあり、停職という厳しい処分がされた側面はあると思われます。しかし、事件によっては、不起訴という結果を大きく見て、懲戒処分を軽くしてくれる可能性もあります。

法律の防御をしっかりすることは、教師としての立場を少しでも守ることに繋がります。

お悩みの方は、弊所までご相談下さい。

 

執筆者・原田 大士の写真

執筆者情報

原田 大士Daishi Harada

弁護士法人 横浜パートナー法律事務所 弁護士