老舗会社の経営者が万引きしたうえ、警備員にケガをさせたとして逮捕されたとの報道!?
1 報道の概要
三重県で、スーパーで万引きしたうえ呼び止めた警備員の男性にケガをさせたとして、会社経営者の男性が現行犯逮捕されました。
報道によると、男性は、スーパーでヨーグルトなど食料品4点を万引きした上、声を掛けてきた警備員の男性の顔を殴るなどし、軽傷を負わせた強盗致傷の疑いです。
2 強盗致傷罪の捜査、刑事処分等
強盗致傷罪は、強盗が人を負傷させることによって成立する犯罪で、法定刑は、無期または六年以上の懲役です。名前や法定刑からも分かるとおり、刑法犯の中でも非常に重い犯罪となっています。
本件は、万引きをしたあと、声をかけられて殴ったというケースです。本来であれば、万引き=窃盗ですが、窃盗犯が、盗んだ物を取り返されたり、逮捕されたりするのをまぬかれるために、暴行や脅迫をしたときは、いわゆる事後強盗となり、結局、強盗罪になってしまいます。このため、本件でも強盗罪となり、さらに被害者がケガをしたことで、強盗致傷罪という非常に重い罪になってしまいました。
罪の重さからも分かるように、本件では、早期に釈放されることはほとんどありません。また、罰金がありませんので、起訴された場合は正式裁判になり、また、国民の中から選ばれた裁判員が評議を行う、裁判員裁判となります。
3 弁護活動
強盗致傷の場合、被害者がいますので、まずはその被害者との間での示談交渉が最優先になります。本件のような場合ですと、窃盗の被害者は店、傷害の被害者は警備員となりますので、両者と示談する必要があります。
ただ、チェーン店などの場合は、社内の規定によって、商品相当額の被害弁償は受けるものの、示談などはしないという対応が一般的です。その場合、謝罪文を送る、発見した警備員に対しても謝罪する、贖罪寄付を行うなど、代替手段を考えることになります。同時に、身柄拘束をされている場合、店に立ち寄らないなどを誓約します。
経験上、ケガの程度が大きくなければ示談できる可能性も充分ありますが、どうしても示談ができなかった場合は、せめて、強盗致傷ではなく、窃盗と傷害に切り分けて、略式命令による罰金刑で終わらせるように、検事と交渉します。
初期の活動が非常に重要ですので、お早めにご相談ください。
執筆者情報
石崎 冬貴Fuyuki Ishizaki
弁護士法人 横浜パートナー法律事務所 弁護士