小学校教員が児童を盗撮して逮捕。どのような処分になる?罪の重さは?

1 報道の概要

2018年10月から2021年3月にかけ、勤務する小学校などで着替え中の小学生の女の子、トイレを利用していた男の子の下半身などを、スマートフォンで撮影したという、児童ポルノ規制法違反・建造物侵入の容疑で、小学校教師が逮捕されました。

逮捕のきっかけは、2021年4月上旬、東京・調布市内のスポーツ施設から寄せられた「スポーツ施設から出てくる女の子を目で追っていて怪しい」という110番通報でした。

警戒中の警察官が被疑者に職務質問をしたところ、スマートフォンから児童のわいせつ動画などが約数千点見つかりました。

被疑者によれば、約10年間にわたって盗撮を繰り返し、データを保存していたということで、ときには、女装をして、スポーツ施設の更衣室に侵入したこともあるようです。

 

2 教員の盗撮案件はそれなりに多い

教員の盗撮案件は、当事務所も経験しているところで、それなりの件数があるものと考えられます。

経験上、小児性愛者という事例もありましたが、多くの事件は、仕事でのストレスから、リスクを追い求めるようになり、それが犯行に結びついたという事例が多かったところです。

 

3 盗撮で児童ポルノ製造罪となる事案

この事例では、盗撮事件ですが、いわゆる迷惑行為防止条例や軽犯罪法ではなく、児童ポルノ規制法違反で逮捕されています。

一般論ですが、盗撮案件で児童ポルノ規制法違反になることは、あまりありません。

その理由は、大きく分けて2つで、一つは、被害児童の特定が困難であること、もう一つは、「ポルノ」だといえるまでの映像を盗撮で撮影できていなければならないからだと言われています。

1つ目の被害児童の特定のお話ですが、児童ポルノ禁止法違反で立件しようとすると、被害児童が、当時何歳だったのかを特定しなければなりません。そのため、その撮影された人を特定することが原則として必要なのですが、盗撮の場合は、誰を撮影したかわからない事例がほとんどなのです。

ただ、この事案のように、学校の先生なので、犯人側が被害児童の特定をしている場合があります。今回の事案も、そのような特殊事情があったものと考えられます。

2つ目の児童「ポルノ」とまでいえるものでなければならないという点ですが、基本的には、陰部や乳首などが映っていないと、なかなか「ポルノ」とまで評価できない事案が多いです。盗撮画像だと、映っていないことも多いのですが、この事例だと、そこまで映っていたのではないかと推測されます。

 

4 盗撮で建造物侵入となる事案

さらにこの事案では、建造物侵入罪の容疑もあります。

これは、おそらく女子トイレなど、教員であっても立ち入ることができないところに入ったという証拠があったものと思われます。

 

5 刑罰の重さは?

初犯であれば、罰金刑となることが多いように思います。

ただ、誰かに転売をしているような場合や、立件される被害者数が多い場合は、正式裁判によって懲役刑になることも考えられます。

 

6 教員免許はどうなる?

これまでの経験事例でいえば、そのままであれば懲戒免職処分になることが多いです。

懲戒免職になってしまうと復職は事実上難しいところです。それまでになんとか自主退職をしようとすることが多いところです。

なお、わいせつ行為で懲戒免職となり教員免許を失効しても、3年経過すれば再取得可能としている教育職員免許法を規制強化する法改正案がありましたが、現時点で国会提出はされていないところです。

しかしながら、近い将来、この法律改正によって教員の採用は不可能になる日が来ることが予想されます。

 

7 当事務所の弁護方針

この事例を当事務所が取り扱った場合の弁護方針を説明します。

おそらく画像等が残っているため、事実関係で争うことは難しい案件だと推測されます。

そのため、早めに接見を行って事情をお伺いし、被害者と示談交渉を進めていくことが望ましい案件だといえるでしょう。

刑事事件として立件された全被害者と示談ができれば、不起訴を目指すことも十分可能だといえるでしょう。

類似案件を犯してしまい、お悩みの方は、当事務所までご一報ください。

 

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執筆者情報

杉浦 智彦Tomohiko Sugiura

弁護士法人 横浜パートナー法律事務所 弁護士