大学の医師が盗撮で逮捕されたとの報道!?

1 事案の概要

昨年10月31日、女子高校生の下着を盗撮したとして、順天堂大学の医師が、東京都の迷惑防止条例違反の疑いで逮捕された。

男は、勤務先の大学付近の交差点で、信号待ちをしていた女子高校生に背後から近づき、小型カメラが仕込まれた靴のつま先をスカートの下に差し入れ、下着などを撮影した。

これを見ていた目撃者が通報し、駆けつけた警察官が男に事情を聴いたところ、盗撮行為を認めた。

警察の調べに対して男は、10年以上前から盗撮を続けていた、盗撮をやめられなかったと話しているという。

男は、脳神経内科で、順天堂大学では先任准教授を務めていて、日本の神経学会をリードしている第一人者であるという。

以上の事案をもとに、問題となる法的論点を解説します。

 

2 特殊器具を用いた盗撮事件

本件では、つま先に小型カメラが仕込まれた靴が犯行に用いられました。

従来は、盗撮といえばスマホを用いた犯行がほとんどでしたが、近年はこのような特殊器具を用いた犯行が増加傾向にあります。

その理由の一つとして、小型カメラなどの器具が容易に入手可能になったことが考えられます。最近は、スポーツやアクティビティの場面で活用できるスポーツカメラなどが人気となり、そのような小型カメラ等が安価で大量に流通しています。そのため、これを悪用した盗撮行為が増えているものと思われます。

事実、弊所でも小型カメラ等の特殊器具を用いた盗撮事件の案件を数多く受けています。

 

3 社会的地位のある人物の盗撮事件

本件は、大学で教授職を務める医師という、社会的地位の高い人物による盗撮事件ということで、世間でも非常に話題になりました。

実は、社会的地位のある人物による盗撮事件というのは、珍しいものではありません。大学教授の医師とまではいかなくとも、大手会社に勤める会社員や、有名大学に通う学生など、私生活においては充実した生活を送ってるように思える人物でも、盗撮事件を起こしてしまっています。

 

4 なぜ盗撮をしてしまうのか

盗撮をする動機というと、性欲を満足させるためというのが真っ先に思いつくと思います。これ自体は間違いではないでしょう。

しかし、盗撮を複数回、それこそ本件のように数年にわたって継続して行っているようなケースにおいては、盗撮行為(が成功すること)そのものに対する欲求に基いて盗撮を行っている場合が多いです。

すなわち、捕まらずに盗撮できたことによる成功感、人が隠している部分を盗み見る優越感、それを画像等に保存して所有する支配欲の充実など、そういった満足感を反復して経験することで、盗撮行為そのものに快感を感じるようになり、結果として手段が目的化してしまっているのです。

これは、一種の性依存ないし性的精神障害とも捉えられているものです。

 

5 本件における弁護活動

上記のように、ある程度の期間にわたって盗撮行為を繰り返している人は、盗撮行為への依存状態にあるといえます。

そのため、そのような依存症を治療するため、専門のクリニックに通院することが重要となります。そうすることで、この先再び盗撮行為を行うことを防止することにつながります。

弁護人としては、検察官に対し、本人がクリニックに通院して治療に努めているという事情をはじめ、再犯防止への取組みや本人の反省を伝え、少しでも軽い処分とするよう交渉していきます。

弁護活動次第では、不起訴処分となる可能性も十分あります。

 

6 盗撮事件を起こしてしまった方は、すぐにご相談ください

弊所では、さまざまな事案の盗撮事件について、多数の弁護活動を行ってまいりました。

特殊器具を用いた盗撮事件や、性依存に悩んでいる方の案件への対応経験も豊富です。

性依存症の治療としての入院をはじめ、被害者の方との示談交渉、親族との連絡、検察官との交渉まで、あらゆる面でサポートをさせていただきます。

 

執筆者・越田 洋介の写真

執筆者情報

越田 洋介Yosuke Koshida

弁護士法人 横浜パートナー法律事務所 弁護士