万引事件で執行猶予中に再び万引した女性に、再度猶予判決との報道!
1 報道の概要
万引事件で有罪判決を受け、執行猶予中に再び万引をしたとして、窃盗罪に問われた35歳の女性に対し、裁判所は懲役1年、保護観察付き執行猶予4年(求刑懲役1年2か月)を言い渡した。公判で弁護側は、事件当時の被告は精神科医の鑑定結果から「神経性無食欲症(摂食障害の一種)と窃盗症で、行動制御能力が著しく低下していた」と主張していた。裁判官は窃盗症を認めずに「完全責任能力はあった」とした一方、神経性無食欲症は認め、不安定な家庭環境の成育歴や前頭葉の構造的・機能的変化などから「万引行為に対する衝動を十分に制御できない傾向にある」と判断し、再度の執行猶予を認めた。
以上の事案をもとに、法的に問題となる点を解説します。
2 再度の執行猶予とは?
執行猶予というのは、猶予期間中にもう犯罪行為をしないことを条件に、刑務所に入れずに様子を見る制度です。従って、その期間中に犯罪をしたら、猶予中の犯罪の分と合わせて、刑務所に行くことになるのが原則と言えます。
ただ、例外的に、1年以下の刑期の場合(今回の事案で、検察求刑1年2か月に対して、刑期を1年と裁判所がしたのは、執行猶予を付ける前提である)、特に理由のあるときにはもう一度執行猶予が認められます。しかしこれは極めて例外的な事例であり、特に、同種の犯罪を行っている場合には、まず間違いなく刑務所に行くことになっています。
3 病的な万引き事案
ただ、本件のような、拒食症に基づく病的な万引き事案の場合は、再度の執行猶予が認められるケースが増えてきています。当事務所でも、過去3回類似の事案で執行猶予判決を得ました。ただ、そのためには、刑務所に行く代わりに病院に入るといった措置と、家族の強い協力体制が必要となります。今回も、報道には表れていませんが、本人と家族の強い決意と具体的対応策が裁判官に伝わったものと考えられます。
4 責任能力の有無
本件では、弁護側は責任能力がなかった旨の主張をしています。ただ、万引き事犯の場合、このような主張が認められることはまずありません。これが認められてしまうと、何度犯行を繰り返しても、責任無能力で無罪となってしまいます。
裁判所としても、原則として責任能力を認めながらも、本人と家族たちの再犯防止の強い決意などを見ながら、再度の執行猶予を与えるのが妥当かを判断しているものと考えられます。
5 本件の弁護活動
本件では、被害店舗のある犯罪なので、まずは示談交渉が大切になります。再度の執行猶予を目指すには、まずは被害者の納得を得ることは大前提です。ただ、それだけでは十分ではなく、今後の再犯を防ぐための入院措置や、家族の協力などの具体的対応も必要不可欠となります。それらの措置を、依頼者とともに行うのが、弁護士の仕事です。
6 窃盗事件を起こした方は、すぐにご相談ください
弊所では、多数の万引き事案の弁護活動を行ってまいりました。
被害者との示談交渉、クレプトマニアの治療としての入院、親族との連絡、検察官との交渉まで、あらゆる面でサポートをさせていただきます。
執筆者情報
大山 滋郎Jiro Oyama
弁護士法人 横浜パートナー法律事務所 代表弁護士